夏休みに学ぶ1~「湘南学園小学校新校舎」がもつ意味を改めて考える

2014年8月29日

 今夏も昨年に引き続き猛暑や大雨に見舞われ、とりわけ中国・北海道地方では、集中豪雨による土砂災害などにより防災関係者の懸命な奮闘にもかかわらず、多数の死傷者が出るなど、昨年度以上の深刻な被害が現実のものとなってしまいました。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を引用するまでもなく、地球環境問題は人類的課題といわれて久しいのですが、いま私たちが帰属する歴史社会が抱える課題の基底に、この課題を改めて据え直す気構えが日常の生活の1つひとつの視点から問われているように思います。 

 さて、教員にとっての「夏休み」は、1学期の教育活動の振り返りと共に、教員として成長するための教育研究・教育実践を様々な角度から考え学んだことを通じて、心身ともに一回り大きくなった子どもたちに向き合う”輝く目を持った教員”としてあるために大きな意味をもちます。
 さて、「夏休みに学ぶ1」として、私は『2014KOREA&JAPAN FUTURE SCHOOL DESIGN EXHIBITIONーREVOLUTION&LINKING』について記すことにします。この報告集は「学校建築の変革ー画一化から多様化に」をテーマに、韓国と日本の幼稚園、小学校、中・高等学校の建築を対象にした作品展が、2014年5月に初めて韓国・ソウルで開催された特集号です。その中の事例研究の1つとして「湘南学園小学校新校舎」が報告されていたのです。
 韓国側の主催者である柳未来教育環境学会会長は、ご挨拶の中で「この展示会は両国の学校建築を通じ分かれる教育の在り方と児童の顔と生活の様子を読み取られる機会の提供、さらにはお互いの現実の理解をもとにした教育と学校建築の今後の在り方に対する討論の場がつくられるという点でかなり意義があると思う」と開催の意味を述べています。 他方日本側の主催者を代表して、長澤悟教育環境研究所所長は「教育は国の未来を拓くものです。学校は地域の未来を支えるものです。そしてその施設はその可能性を広げます」と明快に示され、その上でご自身が東日本大震災後の学校再建計画に係った経験の中から、「学校について話していると、人々の顔は次第に明るくなり、声にも元気が出てくるのです。学校施設の計画プロセスは、みんなで地域を考え、教育を考え直すチャンスにつながります」ととも指摘をしています。
 私学がもっとも基底に据えるべきは、建学の精神です。湘南学園小学校も建学の精神を何よりも大事に80年の歴史と伝統を蓄積してきました。校舎は教育理念の反映であるといわれていますが、2012年度に竣工した湘南学園小学校新校舎は、湘南鵠沼・松が岡という地で、湘南学園小学校80年の歴史を築いた地点から、向こう50年先の目指すべき教育理想を体現するものとしてを検討され構築されました。その際に、多大なご尽力をいただいたのが、前述した長澤悟先生でした。その湘南学園小学校が竣工後、2013年度神奈川県建築大賞を受賞した後も、長澤先生は湘南学園小学校に足を運ばれ、ご自身想定されていた各施設・設備の使用状況を克明に見聞され、また聞き取りを含めて実に丁寧な対応に加え助言もしていただきました。
 一般的に建築物はそうあるべきなのでしょうが、とりわけ教育活動の可能性を左右し、その幅を規程する学校建築においては、「設計管理者」と学校関係者との深い継続的連携が不可欠であり、その連携を通じて「設計管理者」も学校関係者も学校建築と子どもの居場所について深い教育建築学的思想を深めていくことになるのかなと漠然と考えたりもしました。そうした意味で、上記報告書はある歴史的地点にたって、日韓学校教育の比較、学校建築の目線、地域にとっての学校論、居場所論など幅広い教育論を改めて考え学ぶ好機となりました。

 
小学校の校舎のようすについては、下のページに写真を用意しております。ご覧ください。
新校舎紹介のページ