『松ぼっくり』創刊60周年目にあたり~湘南学園小学校が大切にしてきたことと卒業生の想い~

2015年1月23日

 『松ぼっくり』とは、湘南学園小学校国語教科会が発行人・編集者として刊行している全校文集です。その創刊号は1954年9月に遡りますから、今年度で60周年の歴史を刻んできたことになります。
 当時湘南学園学園長であった宮下正美先生は、「創刊の辞」で「松ぼっくりのたんじょう」と題して、刊行への想いを次のように述べています。
 「かわいい『松ぼっくり』の中にかくされている力をうまくそだててやりましょう。みなさんのもっている力は、何かの形に表すことによって、もっと強くなります。表そうとする努力と、表されたものを、おたがいにくらべあうことによって、みがかれて行くからです。ただ考えていたり、言ってみるだけではたりないのです。はたらきによって、形に表してみることは、わたしたち子どものしなければならぬ大切なべんきょうなのです。」「『松ぼっくり』のたんじょうは、ほんとうにうれしい。やがて、いくつもの『松ぼっくり』がつみかさねられるとき、それは、みなさんの子どもの日の、かけがえのないとうとい歴史、たましいの記録となるでしょう。」
 ここには、戦後復興期に宮下園長が『松ぼっくり』刊行に託した”たましいの表現の記録”への強い想いがあり、”形にしてみる”ことへのこだわりが示されいます。
 しばしば同窓会の方々がよく話のなかで口にされる『松ぼっくり』がもつ強い求心力は、単なる学校文集にとどまらない”たましいの表現”の積み重ねが、つまり初等教育時の児童としての自分がそこに輝いていることなのだと読み取りました。
 近く刊行される予定の2014年度『松ぼっくり』は、第95号を迎えますが、そこにも、子どもたちの感性豊かな作品が目白押しです。一つひとつの作品に込められた思いとメッセージを受けとめ、それをしっかりと読み解き、さらに心のなかに拡げた時、創刊60年にわたる『松ぼっくり』の豊かさに、そしてその教育に改めて目を見張ることになるのではないでしょうか。
 宮下園長は、教育者であり、児童文学者としても知られています。戦後復興期の活気溢れる時代と、湘南・鵠沼のたおやかな風が吹き、陽光ふりそそぐなかで丁寧に育まれてきた湘南学園小学校の教育は『松ぼっくり』という一つの果実をしっかりと実らせたといえましょう。この『松ぼっくり』をより豊かにしていくことは、湘南学園小学校教育の創造的発展に通底する関係にあることを理解し、”たましいの表現の記録”のさらなる高みをめざして行きたいものです。