芥川龍之介直筆資料も「鵠沼に暮らした文人とその作品紹介」

2015年10月30日

芥川龍之介直筆資料も「鵠沼に暮らした文人とその作品紹介」
~「鵠沼まつり」と鵠沼郷土資料展示室から~
 

 10月半ばのある日、鵠沼郷土資料展示室等を訪問しました。翌日は鵠沼地域文化の一大イベントである「鵠沼まつり」が控えており、知り合いの地域の方々が展示の準備に大わらわでした。

 地元鵠沼は、鵠(くくい、クグイ 白鳥の古名)が棲む湿地帯が広がっていた地域でした。この地は明治20年代より黒松の植樹による土地改良や別荘地帯としての開発が進み、「鵠沼館」「対江館」「東屋」の3軒の旅館が、加えて貸別荘も建てられ、「空気清爽、夏季の涼風、冬季の温暖な気候と風光明媚な保養地としての鵠沼」が歴史的に形成されました。「東屋」はのちに「文人宿」とも呼ばれ、明治後期から昭和前期(昭和14年廃業)までの時代、志賀直哉、武者小路実篤、与謝野鉄幹、与謝野晶子、徳富蘆花、大杉栄、宇野浩二、菊池寛、谷崎潤一郎、山本周五郎など時代を彩った多彩な文士たちが逗留し、想を練り、執筆し、それぞれの代表的著作を含む作品を世に問うていました。明治43年に創刊された文芸同人誌「白樺」刊行が構想されたのはこの地であることは有名な話であるといいます。

 さて芥川龍之介は、ここ鵠沼に住まった一人で、今回の郷土資料館展示室の特集として「鵠沼で発掘された芥川龍之介直筆資料」に紹介されています。この芥川直筆資料(総数約3千点)を所蔵していたのは、龍之介が大変可愛がった甥(実姉ヒサの長男)の葛巻義敏(文芸評論家)で、戦後龍之介の妻文の実家跡である鵠沼に妹左登子と共に住んでいました。義敏死去後その資料は左登子に引き継がれ、自身会員であった「鵠沼を語る会」の協力もあり、後にこれらの資料は藤沢市文書館に寄贈されました。

 龍之介が高等小学校時代に、級友から原稿を集めて作成された手作りの「回覧雑誌」(周辺は火災から難を逃れた際の焦げ目あり)も含め、今回の特別展のみどころの一つとなっています。

 秋の鎌倉、江ノ島散策の折に、少し足を鵠沼まで延ばしていただき、「鵠沼郷土資料館展示室」にぜひお立ち寄りください。またそのお帰りに、鵠沼松が岡4丁目にあります湘南学園小学校の校舎などもご覧いただければありがたいです。
(参照「鵠沼郷土資料展示室だより」第35号)


 
 
*「鵠沼郷土資料展示室」
(鵠沼市民センター内 〒251-0037 藤沢市鵠沼海岸2-10-34 電話:0466-33-2001
 アクセス:小田急江ノ島線「鵠沼海岸駅」下車徒歩3分 ・休館日は月曜日 年末年始休館)

*「鵠沼に暮らした文人とその作品の紹介 鵠沼で発掘された芥川龍之介直筆資料(葛巻文庫)」は、「鵠沼郷土資料展示室」にて2015年10月15日(木)~2016年1月15日(金)の10:00~16:00まで開催されています。