お手紙②「可愛い子には…」

2016年10月24日

 「可愛い子には旅をさせよ」と言う言葉は、私を支えた言葉の一つです。
 中高ともに寮・寄宿生活・ホームステイで過ごした我が子。10代で親元を離れての生活。大変なことの連続だったこともあったでしょう。「ここぞという時、踏ん張るもんな」と家の冷蔵庫の横に貼ってあるものの、今を踏ん張ることの連続で一日があるわけですから、何かにしがみつきたかった時もあったことでしょう。
 
 人には、その時々で色々な事情というものがあります。本人の意志と家族会議を重ね、その時その場において一番良いであろうことを予測し、人生の選択(進路の選択)をして決めるわけです。人がどう思おうが何と言われようが、「我が子を中心に据えて考える」ことが大切で、視線を合わせて向き合えば、そんなに外れることはないと今も思っています。
 
 家を離れて(遠くで)頑張っている我が子に、時々贈り物をしました。参考書、本、好きなお菓子(乾燥梅・グミ・チョコ…)、そして最後にお手紙を入れて完成。宅急便・空輸便で送るのです。

 お手紙は便箋やメモ用紙に書いた時もありましたが、時にレシートの裏だったり、付箋、新しいストッキングを買った時に付いている厚紙に書き綴って送ったこともありました。色々な想いを書き綴り、書くことに困った時には「つれづれなるままに…」から書き始めました。そして「想いよ 届け!」と段ボールを見送り、送り出してきました。
 
 我が子が高校を卒業し、荷物が送られてきたその段ボールの中に、いかにも大事にされて入っているお手紙がありました。そう、ストッキングの厚紙、レシートまで…。私の届けた手紙を大切に保管してくれていたこと、そして、その手紙が我が子を“励まし”“見守って”くれていたこと。そのことに気づいた私は、しばらくの間、身体が硬直し動けませんでした。ただただ、ジーンとして…。

 
※「可愛い子には旅をさせよ」
我が子が可愛いなら、親の元に置いて甘やかすことをせず、世の中の辛さや苦しみを経験させたほうがよいということ。自分の家を出て、なじみのない土地で暮らすことは苦労や困難も多いが、子は親元を離れ辛く苦しい体験をしてこそ成長するもの。「いとしき子には旅をさせよ」「思う子に旅をさせよ」ともいうらしい。