湘南学園小学校の防災訓練 ~本気で取り組む~

2018年5月10日

 今年度2回目の防災訓練は、新しい教室からの「避難経路の確認」を主目的として、担任による誘導で避難場所へ向かうことです。災害時の行動や注意事項など、基本的なことをおさえての訓練をしました。
 
 訓練に向けて「本気で取り組む」「お・か・し・も・な」とその意味を書いて、本日の避難訓練に備えてみました。私から、子どもたちに呼びかけるチャンスです。「お・か・し・も」ではなく、「おかしもな」だと教えてくれた現2年生の子のことを思い出し「(な)泣かない」も付け加えました。

 入学した1年生が、「幼稚園の時はブザーの音が大きすぎて耳が痛かった」「笛の音で避難していた」など、幼稚園・保育園で体験した避難訓練の話を今朝してくれました。大きな音にもビクビクしてしまうことが発見でした。6年生が「湘南学園小学校のは、本当の地震の音がするよ。だから大丈夫だよ」と伝えてくれました。
 
 校長講話では、地震と津波の話をしました。2011年(平成23)3月11日に起きた「東日本大震災」。2万人を越える死者・行方不明者が出て、大勢の人々が津波で家や車を流され店や工場も壊され、津波は防波堤や防風林を越えて町や家々を襲いました。

 しかし、この大地震・大津波の時に、奇跡のような出来事が起こったのです。それを今日の話にしました。岩手県の釜石市の小・中学生、約3000人がほとんど全員(99,8%)が津波から逃げ延びて無事だったと言う話です。それは、釜石市の小中学生は何年にもわたり、津波からの「避難訓練」や「防災学習」を積み上げてきたからです。その指導をしてくださったのが、群馬大学大学院の片田敏孝(としたか)先生でした。現在は、東京大学の先生です。

 何と、その片田敏孝先生が、湘南学園小学校にも来てくださいました。2014年11月15日のことです。そして、実際に「防災教育で大切なこと」を教えてくださり、広域防災避難場所に指定されている本校の屋上から海の方向を見て言いました。「この学校は大丈夫。地震がきてから避難まで慌てなくていいから、人の点検、持ち出し準備など落ち着いてしっかりとすること」と。
 
 片田先生が子どもたちにどんなことを教えて「みんなの命を救ったのでしょうか」。まとめて、次の3つについて、具体的な話をしました。

1つめは、「想定にとらわれるな」
2つめは、「最善を尽くせ」
3つめは、「率先(そっせん)して、避難者(ひなんしゃ)になれ」ということです。
 
 小学1年生から6年生までと先生方にも感想を聞いて見ました。
「先生の話、ちょっと怖かった」(1年生)
「6年生で、泣いている人がいたよ」(1年生)
「今日の話は、わかったよ」(6年生)
「毎年聞いているから、だんだんわかってきたよ」(6年生)
「ぼくたちは幼稚園の時だけど、今の1年生は生まれていないでしょ。だから、ぽかんとしていたよ。」(6年生)
「幼稚園の時、お母さんが働いていたから、お友達と一緒にいたんだ。思い出しちゃったよ。」(6年生)
「繰り返し僕たちが言うところで、1回目は言っていいのか分からなかったけど、2回目からはみんな言っていたよ」

 今日の講話にあたり、第56回関東地区私立小学校教員研修会で本校を会場校にして開催した時のことを思い出しました。片田先生からの全体講演会のテーマは「想定外を生き抜く力を育む防災教育」でした。

 最後に、その時に印象に残ったことを掲載いたします。

●「災害で人は死んではならない」と、開口一番「防災教育の必要性を強調され、防災教育の本質は、「子どもたちに生き抜く力を育み。そして、そのような子どもたちが大人になり社会を築いていくからこそ、防災教育をしっかりやらないといけない」

●「あの日、子どもたちは一所懸命逃げてくれました。そんな子どもになってほしいという思いの中で、防災教育は、いざという時、本当に逃げられる子どもにする。そのために、人は内面から変わらなくてはならない」と、様々な状況で津波に遭遇した子どもの事例を挙げながら、内発的避難意識を育てる必要性を、繰り返し話され、「自分の命を最優先に守れる子どもであることの大切さ」を強調されました。

●「また、防災教育は災い教育ではない。私たちは海から沢山の恵みを受けている。地域への感謝を忘れてはならない。その時、その日はしっかり逃げる。それがその地域に住むお作法です」