第712回 美の壺~「あじさい」の魅力を探究する

2013年7月3日

  『美の壺』は、日本人の生活をとりまく様々な文化の美しさを紹介する、独特の雰囲気をもったすてきな番組です。現在はNHKBSプレミアムで毎週金曜日に放映され、年を重ねてもイケメン俳優の草刈正雄がコミカルな案内役を務めます。題字を記す書家の紫舟がオープニングに登場し、番組全体にはジャズの名曲が流れます。
 日常の暮らし・衣食住に隠れた美のポイントを探る展開はおしゃれで、何気ない器から景色までいろいろ見直してみるヒントを届けてくれます。

 

 先週のテーマは「あじさい」でした。年々人気が高まり、母の日の贈り物の定番にも加わったそうです。紫陽花は何と日本が原産の花で、万葉集の時代からその美を詠われました。西洋でも進んだ品種改良の成果を受けて、いまや紫陽花は多彩の極みをつくしていることを知りました。色も形も驚くほどバラエティに富んでいます。同じあじさいでも土の成分に影響されて青色にも赤色にもなり、同じあじさいが時間の経過で「七変化」をとげるのも魅力的です。がくあじさい系も含めて花弁の形も更に多様で、愛好家の努力で次々と新品種が登場しています。思い入れたっぷりのネーミングが施されています。

 

 番組では“あじさいの本場”鎌倉が中心となり、「明月院ブルー」に続いて、「北鎌倉古民家ミュージアム」が紹介されました。ここでは、つつましくも可憐な山あじさいが主役でした。日本の野山でひっそり咲くこの花を、欠けた陶器に生ける「和のあしらい」の場面で驚きました。
 説明されたのは、副館長の長谷川幹晃様でした。本校の高3生に息子さんの典彦君がいます。将棋が五段で中3の時には県大会で優勝した強豪です。またお母様の浩子様には、本校のPTA活動で毎年多大なご尽力を頂いています。

 お父様は、山あじさいの、野山にあるがままの姿を大事にして、独特の美をあしらわれていました。古民家のたたずまいと苔むした庭になじむ器に生けて、自然でわびた風情を醸し出されるのです。半分も欠けた器は平安時代の由緒ある名品です。
 “欠けた器が何かを求めてそこに山あじさいがぴたりとはまって響き合う”姿に惹かれました。慈しむようにあしらわれるお父様のご説明はわかりやすく、野趣ある高雅な日本の美を伝えて下さいました。

 

 紫陽花シーズンの北鎌倉はいつも観光客でいっぱいですが、ミュージアムにもぜひ訪問したいと強く思いました。