第198回 中東、世界に拡がる民衆の抗議デモ

2011年2月23日

中東(北アフリカ~西アジア)の情勢が、驚くべき展開になっています。

先月、地中海に面した「チュニジア」で反政府デモや暴動が拡大し、大統領が国外へ亡命し、23年間続いた独裁体制が崩壊したのが最初でした。高い失業率 や食料価格高騰が改善されず、大統領一族の腐敗ぶりや豪勢な暮らしぶりに民衆が怒って蜂起し、いわば革命となったのです。
このエネルギーは即刻、アラブの大国「エジプト」に伝播しました。30年近く同国を統治してきたムバラク大統領の退陣を求めて、各地で大規模な反政府デ モが続き、首都カイロに連日民衆が集合する光景は連日ニュースで報道されました。外出禁止令やネット遮断、政府支持のデモ組織などあらゆる工作がなされま したがすぐに行き詰まり、「今期限りの退任」から「即時辞任、当面の軍政移行」へと転換されたのです。

さらに抗議デモは、ペルシャ湾岸の島国「バーレーン」や、チュニジアとエジプトに挟まれた「リビア」、アラビア半島の「イエメン」、大国「イラン」など中東全域の多くの国々に一気に広がっています。騒然とした激しい情勢の変化には息をのむばかりです。
バーレーンの首都の広場に集まった大群衆は、王室や政権の打倒を叫び、「シーア派VSスンニ派」の構図も浮かび上がり、隣国サウジアラビアなど周辺の王国は極度の警戒を強めています。
リビアでは、41年間の独裁を続けるカダフィ大佐への怒りが一斉に噴出しました。反体制派やメディアへの締め付けが格段に厳しいこの国でも、石油の莫大 な収入の一方で、30%前後という失業率や腐敗した政治が続きました。決起した民衆に対して治安部隊や傭兵が抗議デモ参加者に発砲、空爆など容赦のない弾 圧を強め、すでに300名以上が犠牲となり、内乱へ突入しています。この弾圧の報いをいずれ受けるのは必至と思われます。

これらの国ぐにには産油国が多いですが、そうでない国もあります。王様のいる王国もあれば、いない共和国もあります。親米派の国もあれば、反米派とされ る国もあります。共通するのは、民衆の要求を十分に汲み取らず、長期間にわたって独裁権力を維持する体制に対して、国民的な抗議デモが広範に行われ、弾圧 や脅迫にまけずに続けられて、独裁体制がついに倒されたことです。しかもある国の変化が他の国の人びとを勇気づけ、連鎖して進行しています。

高校生や中学生の諸君は、こうした情勢をどのように見て感じていることでしょう。一方で日本の政局は実りの薄い混迷を続けていると思われます。民主主義の基盤には恵まれるはずの日本で、いま何が問われているのでしょうか。
今回の抗議デモの国際化には、ある重要なポイントが指摘されています。新しい時代の新たな可能性についても、目を向けねばならないでしょう。

(明日へつづく)