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月別 校長通信

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第808回 『阪急電車』における、励ましのリレー(つづき)

2013年12月19日

昨日からのつづきです。
この映画は、こうした励ましのリレーに彩られています。傷ついた女性が、励まされた女性が、今度は別の女性と出会い、悩みを尋ねて癒やしたり、励ましたりする。そんなバトンタッチがこの作品の基調なのだと気づかされました。
考えてみると、そんな場面は学校の社会にもあるものです。学園の在校生の間にもそのような励ましのリレーが生まれる場面があったことに、我々教員は気づかされます。

 

この映画で一番感動した場面は、後半の復路「小林(おばやし)駅」のホームでの一コマです。同級生達から心ない嫌がらせの言葉を受ける小学生がいました。婚約が破れて新たな生活を始めたOL女性が近づきます。成り行きを見て少女に近づき、身をかばいながら声をかけるのです。二人が同じ名前とわかるまでの場面は、慈しみにあふれています。“翔子さん”が“翔子ちゃん”に投げかける意外な言葉は、精いっぱいの思いやりをひめています。長い人生へ向けての励ましのメッセージと、翔子ちゃんの表情の変化。この5分間の場面は特に感動が大きくて、DVD購入の決め手となりました。字幕を入れて台詞を確認しながら何度も視聴するほどでした。先生方や親御さんにぜひ観てもらいたい、味わって頂きたいなと思われました。

 

この映画の中心は女性です。宮本信子、南果歩、中谷美紀、戸田恵梨香、谷口美月など、各世代の女性の配役はなかなか豪華ですが、ていねいに的確にそれぞれの人物像を演じています。また素朴な大学生の男女が出会って愛を育てる場面も、リアリティにあふれ、恋愛への憧れをよぶことでしょう。
ラストシーンでふいに映画の主題歌が流れます。aikoの『ホーム』です。阪急は彼女も若い頃に毎日乗った懐かしい電車です。映画の登場人物はそれぞれに笑顔で日常生活を再開しています。自身の想い出ものせた歌声がエンディングを愛おしく飾ります。“えんじ色”or“あずき色”の車体とレトロな内装が阪急電車の個性のようで、四季折々の沿線風景の走行風景は、名曲に支えられて素適な抒情に満ちていました。やさしい気持ちに、幸せな思いに恵まれる映画です。

 

ごぞんじの方々もおられると思いますが、この映画の原作は話題になった小説です。作者は有川浩さん、変わった名前ですが女性作家です。5年前に出版され、幻冬舎文庫版で100万部を越えたベストセラーです。
映画化にあたり一部割愛された部分もありますが、映画の台詞は小説の大事な会話のところを、相当忠実に再現していました。
あとから小説の方も読んでみましたが、この時代の各世代の女性の心理をここまで表現できるのは、さすがに同時代の女性しか出来ないだろうなと思われました。原作から入っても映画から入っても、違和感なく合流できて、ともにお勧めできる作品です。

 

 

“人びとはそれぞれやりきれない思いを抱えて生きている。死ぬほどつらくはなくても、どうにもならない思いがある。その気持ちは誰にも言えないから自分で解決するしかない。でもたとえ見ず知らずの人であっても、話を聞いてくれるだけで心が安らぐこともある。希望がよみがえることもある。”
・・・・・・そんなメッセージが作品の基調にあるから、観て良かった、読んで良かったと思えるのでしょう。“人生の機微を知る”“世の中って結構いい”という言葉が最後の方で出てきますが、説得力を持って伝わってくることしょう。

ご家族でこの作品を楽しんでもらい、ささやかでもたしかな安心や希望などが共有されるきっかけになればと願って、この作品をお勧めした次第です。