第975回 読書の秋2014~子ども達のネット依存を考える①

2014年10月21日

読書の秋にちなんで、時々お勧めしたい書籍を紹介させていただきます。

今日は、子ども達にも浸透したケータイ・スマホをめぐる問題について、その状況と時代背景についての認識を深めてくれる、優れたブックレットを取り上げます。

『つながりを煽られる子どもたち~ネット依存といじめ問題を考える』~土井隆義著(岩波ブックレットNo.903/2014年6月刊)という本です。

子どもたちのネット依存は、最近「LINE」というアプリの浸透により、一気に注目を集めています。人間関係の“常時接続化”が生活のリズムを崩し、そのつながりへの依存と、新しいいじめの形までももたらしています。

こうした「つながり過剰症候群」に至る社会的背景と、子どもたちの心理的メカニズムを追求するのが、この本の主眼となっています。その中から、特にポイントと感じられた指摘をいくつか列挙させてもらいます。

 

・子ども達にとって、ケータイやスマホは今や、友達との人間関係を円滑に維持していくために必須のツールとなっている。特にLINEは音声電話とほぼ同じリアルタイムでのコミュニケーションが、しかも時間と場所を全く気にせずに繰り広げられるようになった。いわば“24時間常時接続化”が急速に進む中で、ネット依存と呼ばれる現象が大きな社会問題として浮上した。オンラインゲームや動画など多彩なコンテンツ依存も広がった。

・近年の学校では、生徒間の関係トラブルが目立ち、対教師暴力は激減した。今日いじめ問題では、殴る蹴るより嫌がらせや暴言など精神的暴力が目立ち、いじめの舞台も学校空間に限られず、ネット空間へと広がってきた。その被害を避ける気遣いからネット依存に陥る子ども達も多い。

・今ではクラスや部活にとらわれない複層的な人間関係が、学校の中で同時に築かれるようになっている。趣味趣向に応じて気の合う仲間ごとにグループを使い分け、それらを同時並行で進めることも容易になった。学校ではほとんど口をきかないのにLINEのグループ内では密接につながることもある。

・ネットを介しての人間関係は可視性が低く、教師や親からは見えにくい。その分自由に人間関係を広げられ、不本意な相手との関係に縛られない満足感すらある。しかし何時でも誰かとつながれる環境が用意された結果、皮肉にも独りでいる時の孤立感は強まりやすい。誰からも反応がないと自分には人間的魅力がないためかもしれない、などと悩みやすくもなる。

 

ここまですでに読者は、鮮やかな分析に共感しながら読み進めることでしょう。このままこの本の要旨を追ってみたいと思います。(明日へつづく)