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月別 校長通信

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第1009回 現代の男性へ届ける知恵と励まし ③

2014年12月4日

後期中間試験の4日目であり、中学生は最終日になります。

数日間つづく定期試験は、最終日まで地道な努力で粘りきる姿勢が大事になります。最後の科目まで試験範囲の総点検を怠らず、答案用紙にベストを尽くす姿勢が求められます。テストの終了を友達と笑顔で迎えられるように願っています。

 

ちくま新書の『男子の貞操~僕らの性は僕らが語る』(坂爪真吾著)についてのご紹介を今日でまとめます。内容上この本を選ぶことは躊躇しましたが、在校生や卒業生、そしてこの時代を生きる若者みんなが抱える切実なテーマであると考えます。自分の身を守り、幸福な人生を築いていく上で、男子も女子も性のテーマを真摯に直視することが必要でしょう。この問題を考えるための知恵と励ましに富んだ書としてお勧めしたいと考えた次第です。

筆者の提起する処方箋は、「恋愛」の章でグッと読者をひきつけるはずです。「恋人をつくるための方法」について、テクニックやノウハウ、会話術や“攻略法”といった次元でなく、簡潔な秘訣が述べられます。それは「社会的ネットワークの中で異性と出会う機会、異性を紹介される機会を増やす」こと、それだけだとの直球がやってきます。

世の中にどれだけ出会いの機会が増えても、学校や職場、サークルや地域の集まりなど自分の慣れ親しんだ社会的ネットワークの中で、自分と似ていて趣味や価値観で共鳴し、過去の履歴がわかる信頼できる相手と結ばれるケースがやはり多いこと、安定した関係を築きやすいことが説明されます。自治体主催の婚活支援事業(TVの人気番組も想起されます)など新方式のチャンスづくりに参加することもあり得ます。

地方の進学校にいた筆者の高校時代の鬱屈や、出会い系カフェを頼りにしたある男性の犯罪の軌跡も参照して、社会的ネットワークに一切所属せずに恋愛だけを切望するのは、極めて難しいことが述べられます。いま所属する社会的ネットワークへの貢献度を高めることが、実は恋愛への意欲も取り戻し、恋人を得る最短距離で効果的な処方箋につながりやすいことが説明されます。この辺りは特に続者が自分に引き寄せて深く考えるきっかけになりそうな所です。そして恋人は時間と“コスト”をかけて二人で育てるもの、との自覚を深めて、良きパートナーに恵まれるように、との励ましが述べられます。

 

その後本書では、「初体験」がテーマになります。異性の前で初めて裸になることの解放感と得られる充足感を追究し、スキンシップの大切さに着目し、時間と関係を積み重ねてお互いのフォローで到達するものであるとの助言がなされます。次に「性風俗」に論考を移してそのリアルな実態とリスクが説明されます。そして「結婚」が対象化されます。特定のパートナーとの定期的な性生活の意義を再考し、その充実のために時には性を語り合うことが勧められ、意外にも複数の分野と世代で異性の友人を複数作ることが提案されます。この辺りはずいぶん保守的な意見だなと感じる人もいるでしょうが、タブーと思われる領域にも入っての提起も続いています。そして性生活の「持続可能な循環システム」をつくろうとの締め括りでこの章はおわります。

最後に筆者は、社会的な視点から豊かな性生活を送るための方法論を述べます。障がい者と性の問題に取り組んできた経過を紹介し、「性の公共」を社会に構築する問題意識を述べています。そして女性が自らの性の「時間軸」を強く意識して生きていくように男性も時間軸を持って自分の現状や悩みを相対化し、セックスの「分際」を認識して生きていくように助言しています。

 

この本は今の社会を生きる男子のための処方箋として、セクシュアリティに関する様々な問題を総合しています。筆者はあとがきで、この本が男性向けの性教育書として末永く読み継がれる古典となり、現在2歳の息子が18歳になった時に書店の本棚に残ることを願って書いたと述べています。その志に深く共鳴する読後感がありました。関心を持たれた方にぜひ読んでみていただきたいです。