第1108回 新たな生きがいや仕事を求めて~ある取材番組から

2015年5月27日

今日はあるテレビ番組を紹介します。土曜日お昼前の時間帯の放映なので、録画予約を含めて推薦したいです。

『目撃!日本列島』という約25分の短い番組です。ごぞんじでしょうか。“NHKの各放送局が、地域の課題や奮闘する人びとを密着取材した珠玉の地域発ドキュメンタリー”と紹介されています。

 

先週は「“釜ヶ崎芸術大学”~心の扉を開けて~」でした。舞台は大阪の釜ヶ崎。日雇い労働者の街として知られ、現在は一人暮らしの高齢者の率が高く、生活保護を受けている住民も多い街です。

身寄りや話し相手に恵まれずに孤独な日々を送る人達に、芸術を通して出会いと交流を促すNPOの活動がありました。代表者は詩人の女性であり、「ココルーム」を拠点にして、体調を崩して部屋にこもりがちな住民にも次々と声をかけます。詩や俳句、絵や造形を通して学びと創作の楽しみを知る人びとを広げます。“芸術大学”は希望の集いの場です。

参加者にペアを組ませてお互いの過去を話し合わせ、共感した相手が詩や俳句で表現するという設定が感動的でした。絵画サークルを作り、展覧会に出す作品づくりに燃える高齢者もいました。それぞれ家族や配偶者との離別、転職や転居や病気を経て、人付き合いもほとんどなく生きがいや誇りを失いかけていた人達です。酒やギャンブルで健康を崩したことも述懐されます。

それが生活に張り合いが戻り、仲間と寄り合いの場を得たのです。3畳1間や公園でも創作や詩作に没頭するのです。“毎日が楽しくて生きられるのが嬉しい”と笑顔が増え、インタビューで的確な言葉を紡ぎ出す様子が印象的でした。子どもの頃の初恋の思い出を語る中で、一人で抱えてきた様々な気持ちがあふれ出す姿もありました。

 
先々週は、「ニックネームからの再出発~サラリーマンの“人生塾”~」でした。東京港区のビルの一角が舞台です。「今の会社で定年を迎えられなかった」人が増えています。終身雇用制度が揺らいで早期退職が増える中、第二の仕事と人生へと歩み出す“元企業戦士達“の苦闘や模索がテーマでした。

大企業の管理職まで務めた人びとが半年間近くを学ぶ“人生塾”。50代や40代の塾生の人達は再就職先を探しています。元エリートの肩書きが生かせず、逆にプライドがマイナスとなり苦戦する人が少なくありません。

そこで企業名や肩書きを一度取っ払って“裸の自分”と向き合うために、塾生は本名を伏せてニックネームをつけて研修していきます。名だたる大企業の事業部長や実績十分の技術者もいるのは、グローバル経済の激しい競争で閉鎖される事業部門があり、早期退職が勧奨され、突然の退社に追い込まれるサラリーマンが増えた現実を浮き彫りにしています。

模擬面接では、まるでプレゼンできずに再就職の難しさがわかる人もいます。家族がいて自宅のローンや子どもの学費も必要な境遇、この世代にかかるプレッシャーも容易に想像できます。そこで仲間の懸命な努力にも触発され、自分の長所や持ち味を再発見し、新たな仕事のステージを求めて元気に挑戦し直す姿が丁寧に取材されていました。

 

今週土曜日は『近くて遠いふるさと~福島大熊町の子どもたち~』です。確実に録画して視聴するつもりです。土曜日の午前11:30~11:54に放映されます。在校生やご家族にもぜひ多くの方々にご覧になっていただければ幸いです。