第1163回 「駅ナカ」事業の広がり~便利さとその影響

2015年9月15日

前期期末試験の2日目です。朝晩は驚くほど涼しくなり、秋の到来を感じさせます。生徒の皆さんの試験勉強がはかどることを期待しています。

 

この時期は近隣へ出張する機会が多く、電車を利用しながらあちこちの駅の周辺を眺めてよく感じることがあります。今日は「駅ナカ」事業について取り上げてみます。

ターミナルや大きな駅では、どこも商業区域が充実されてきました。多数の乗降客が確実に行き交うスペースゆえに、鉄道会社が力を入れるのは当然だったと思われます。「エキナカ」の言葉は、たとえば「デパチカ」と同様にすっかり定着しました。駅の構内には昔ながらの売店だけでなく、飲食できる店や一般の食品店・雑貨店・書店・衣料店など、何でもそろう光景があります。

JRでは、大宮・品川・大船など著名な例はたくさんあります。藤沢・茅ヶ崎・平塚・小田原なども、駅ビルや地下街など合わせておしゃれなショッピングゾーンが目を惹きます。拠点となる駅同士の競い合いも大変なことでしょう。

毎日の通勤客や地元の人も、たまに寄ったり通過する人も、気軽に利用して楽しめる「駅ナカ」の魅力と利便は大したものです。しかも「PASMO」や「Suica」など乗車カード&電子マネーが普及し、様々な買い物を更に便利にしました。鉄道もバスも、定期も買い物も一枚で済みます。チャージ方式カードの間の互換性も保証され、“何でもカードで”の生活スタイルに多くの人達が慣れ親しむようになったのです。

 

気になるのは、人びとの移動と消費行動が駅から駅へ、その限定範囲に制約される結果になりやすいことです。駅の周辺に広がる伝統的な商店街に与える影響は甚大です。じわじわとお客さんが減って経営が困難になるお店も増えやすいのです。ある駅で降りて駅前から周囲に徒歩でたどってみます。数年ぶりに歩いてみて、驚くほどお客さんの少なくなった商店街の様子に驚くことがあります。

もちろん事態は一様ではなく様々な事例がありますが、街全体のにぎわいをいかに回復させるか、切実な思いで対策を考える人びとは大勢おられます。

学園生や卒業生にも、時にはそうした視点で自分の居住する、あるいは生活範囲にあるいくつもの街の様子に目を留めてもらえたらと思います。