第1201回 持続可能な開発目標・SDGs~国連70周年の決意 ②

2015年11月9日

前回からのつづきです。
「持続可能な開発目標」は、「ミレニアム開発目標」に掲げられた継続課題に加えて、気候変動への対応、海洋資源の保全と利用、持続可能なエネルギーの確保など、途上国のみならず先進国も自国での取り組みを本格化すべきアジェンダ(国際的な行動計画)が多数盛り込まれました。
21世紀に入ってからの国際情勢を少し振り返ってみましょう。地球温暖化はもちろん、異常気象や自然災害の増加、それに伴う生態系の破壊が進行しています。国境を越える数々の感染症の脅威に関するニュースも増えました。
そして特にアフガニスタンやイラク、シリアなど中東諸国をめぐる深刻な戦乱、貧困と格差に起因する国際テロリズムの蔓延、中東からEUへと波及する大規模な難民の問題、新興諸国の台頭の一方でむしろ増大する世界的な所得格差、といった様々な状況を容易に想起できることでしょう。

 

そうした互いに絡み合い、解決への道のりを複雑化させる諸問題に対して、国際的な協同の取り組みをあらゆる領域で推進していこうとして、SDGsが設定されました。ここにはインターネットやアンケートを通じて寄せられた、約720万人の一般市民の声や意見が反映されたことも重要な特徴です。SDGsは、“理想的、野心的に過ぎるようで、現実を踏まえたリアリティに優れている”とも評されています。
先進国日本でも、「新たな貧困」の報道が増えています。貧困層の家庭に暮らす子どもが6人に1人というデータ、ブラック企業やブラックバイトなど労働者をめぐる劣悪な環境などがすぐに例示できるでしょう。SDGsの多岐にわたる取り組み対象全般に照らして現状を鑑みるのも有効なことでしょう。

 

パン・ギムン国連事務総長は、これは「私達の世界にとって歴史的な転換点が訪れたことを告げる普遍的、画期的なアジェンダ」であり、これは「“地球上の誰をも置き去りにしない(Leave no one behind)”ための行動計画」である旨を述べていました。
SDGsは、国際社会と各国政府の責務を示すとともに、地球上で暮らす私達全員、人類全体の自覚と協力を促すものです。

この目標の追求と、本校が掲げるESDの推進は、直接に結びついた課題であることがわかります。次世代の若者達がまず、地球規模のテーマを「自分に関係あること」として捉えることが求められます。様々な事実を知り、その背後に何があるのかを考え、多数の情報から要点を洞察し、周りと共に行動していける力。グローバル市民として育んでいきたい資質です。
そして、日々の生活や仕事や学業を通じて何ができるのかを一緒に考えて取り組んでいくことは、先行する大人の世代でも問われ、求められていることです。