第1219回 冬に備える樹木の営み ②

2015年12月2日

昨日からのつづきです。冬に備える樹木の営みに注目しています。

冬には外気温が水が凍る零度を下回ることも普通です。樹木の細胞内の水分は糖類やミネラル類が溶けているので、できるだけ糖類の濃度を高めておくと凍りにくくなります。細胞が凍ることはその死につながります。そのため樹木はできるだけ多くの糖類を細胞内に貯め込み凍りにくくする必要があり、また細胞に貯め込んだ糖類は春になって芽吹き、枝葉を茂らせる際のエネルギーとして利用できます。

実は、樹木は紅葉するずっと前の8月には、来年の花や葉の芽を用意しています。そして紅葉は、樹木にとって厳しい冬を乗り切るために、細胞内に糖類を少しでも多く蓄えるために備えた機能だと考えられるのです。白菜などの冬野菜が、畑で寒さを越したものほど甘く美味しくなるというのも同じ理由で、細胞を凍らせないために細胞内の糖濃度を高くするからです。(以上、和田博幸先生の解説から)

 

このように、樹木の生きぬく工夫は年間を通して展開されています。樹木の姿は何も変わらないように見えて、その内部では外の厳しい環境と戦おうと絶えずエネルギーが補充され、生きぬく力が蓄えられています。

人間の日々の生活は、こうした樹木のドラマから学ぶことがたくさんある気がします。傍目にはわからなくても、内面を鍛えて豊かにしながら、きたるべき春を待つ。樹木と違って移動自由な人間の生き方も、更にそうありたいと思われます。

 

年齢を重ねてから、身の周りの樹木に目を向けるようになりました。名もない大きな木々は身近に数多く存在します。新緑や紅葉の時期にはよく大きな公園へ出かけるようになりました。樹木に名札がつけられ、一日で数多くの樹木と出会えるような公園の名所訪問を楽しみにしています。

在校生や卒業生の皆さんも、近所や通学路の周辺から無名の偉大な樹木を探してみてほしいと思います。これから紅葉&黄葉の散りゆく風情、公園や道路に広がる落ち葉の光景にも注目してほしいものです。