第1223回 SNSの普及と言葉の力

2015年12月7日

後期中間試験の第4日目です。

今回は、現代の生活に浸透したSNSと言葉の持つ力について取り上げます。

 

SNS(Social Networking Service ソーシャルネットワーキングサービス )の普及は、ネット時代に生きる人びとのつながりに、大きな可能性とリスクを与えました。

SNSは、友人や知人間のコミュニケーションを円滑にします。趣味や地域、出身などを、また「友人の友人」等のリンクを通じて、新たな人間関係を広げる場を提供してくれます。自分のプロフィールや写真を会員に公開したり、互いにメルアドを知られずに別の

会員にメッセージを送ったり、新しい友人を登録したり、友人に別の友人を紹介する機能など様々な操作が可能です。多くは無料のサービスですが、サイト内の掲載広告や商品の推薦機能を設け、売上の一部を紹介料として徴収するという収益モデルのようです。

 

いまや多くの中高生が各種のSNSを駆使して暮らしています。便利で楽しく、友達関係の維持には必須と感じる人が少なくないはずです。ライン、ツイッター、フェイスブックなどに日常的に関わる時間が長くなったことでしょう。

一方でSNS絡みのトラブルや犯罪が多発し、どの学校でもそうした問題行動に直面して指導を重ねています。学校や警察などの情報交換も広がり、予防と啓蒙の指導課題もいっそう重要になっています。

 

根本的な問題として、うわべだけの言葉、体験の伴わない言葉の乱発という状況があります。

スマホやパソコンの普及によって文字だけのコミュニケーションが増える中、他者の痛みに無頓着な言葉もあふれています。「きもい」「ウザイ」「死ね」といった言葉が複数の相手から送られる恐怖まであります。顔の見えない相手がどう追い込まれているかは思いやれません。2チャンネルなどの掲示板サイトにどぎつい攻撃的な言葉が氾濫しています。ニュースや映画・ドラマ、ゲームなどでは、殺人までもが日常的です。

「死」に直面する体験は身近に乏しく、自身が死ぬほど痛かったり、苦しい思いはしていないのが普通です。「死」の直接体験がない中で、TVや漫画やネットで見慣れた「死」の言葉が上滑りした攻撃的な形で使用されるのです。

 

言葉は、人生の様々な体験を通して豊かになり、磨かれていけるものです。体験を語り合い、共有する体験を重ねていく中で、誰もがていねいに言葉を選べるようになります。読書を重ねて豊かな言葉や的確な言葉に接すると、自分なりの言葉を選んで使う姿勢にもつながります。相手を傷つける言葉を平気で使うような人間になってはいけません。

言葉を選ぶことは手紙やメールの場面でも問われることです。SNSにも反映されるべきことでしょう。発信する前に受け取る相手の心情を考えることです。その場や状況に応じた適切な言葉を選ぶことが大事なことです。