第1248回 人類の連帯と責任が問われる

2016年1月21日

昨日までのつづきで今回でまとめたいと思います。

パリ協定は、2020年以後の対策の枠組みを定めた国際的な約束です。

中心となる長期目標は、気温上昇の抑制です。化石燃料の爆発的な使用で大量生産・大量消費を始めた「産業革命」を歴史的な起点とし、それ以前からの気温上昇を2度よりかなり低く抑えて1.5度未満を目指す、という具体的な目標が明示されました。

そのため今世紀後半には、温室効果ガスの排出を森林や海洋による吸収の範囲内に抑える、つまり実質的にゼロにするという厳しい長期目標がもりこまれました。

世界各国がそれぞれ申告した取り組み内容は、共通に測定、報告、検証するルールが適用されます。5年ごとに自国の目標を点検して向上を図る仕組みが合意されました。各国の責任ある国内対策が問われます。

被害への救済や資金支援のあり方、透明性の確保や専門家による調査なども重視されています。

 

このままでは北極や南極の氷がどんどん溶け、海面がじわじわと上昇し、大都会の大気汚染が更に悪化し、洪水や干ばつが多発して新たな貧困や紛争が広がる。リアルな危機感が情報化の進む中で世界の人びとに共有されました。次世代や子孫に対する責任が自覚されました。

「共通する差異ある責任」という基本原則が注目されます。地球温暖化の影響は地球全体に及ぶとはいえ、各国にもたらす被害の規模や速度は一様でなく、二酸化炭素等の排出量や抑制へ向けた能力も国によって異なるからです。

“沈みかけた「地球船」の中で、乗客同士が言い争うだけでは、皆で破滅へ向かうだけだ”と悟った世界が一歩大きく成長したとも形容されます。先進国と途上国が責任を押しつけ合うのでなく、同じテーブルについて長期的な目標を共有し、その達成へ向けた「共通の責任」を確認したことが重要なのです。

 

日本は、国内総生産で世界第3位、ガス排出量で第5位の大国です。達成の道筋や仕組みを検討するのは政府や企業が中心でも、家庭や自治体や社会全体もまた、様々なつながりを広げて省エネルギーを改めて追求する責任を共有しています。

在校生や小学生の皆さんにも、こうした人類の課題に向き合い、生活や社会のあり方を考えて行動できる人間に育ってもらいたいです。