第1310回 総合学習高校2年研修旅行の可能性

2016年10月28日

4コースプログラムは発信する

 湘南学園高等学校2年生とは、学校生活全体においてリーダーとしての役割を果たす学年です。
 その高校2年の総合学習としての研修旅行は、全国4~5つのコースに分かれて4泊5日で行います。担当教員と研修旅行の担当委員の生徒の皆さんを中心に、いま掲げるべきテーマとコースを大いに議論し、手づくりで企画を練り上げていくのです。どのコースもそれぞれのテーマに基づき産業・開発・環境・平和といった諸問題を事前学習し、訪問する先々の現実をじっくりと見据え考え学び、そこから次の課題を確認して行きます。そうした研修旅行を支えていただくのが、現地で民泊をお引き受けいただいている地元の皆様ということになります。分かれての民泊、それぞれの民泊先で地元ならではのおもてなしに感激し、またそれぞれの地域が抱えている悩みや課題に相槌を打ちながら、地元の皆様がそれぞれ取り組んでいる仕事のやりがいについてお話をお聞きしたりします。現地での活動形態は班別自主行動を含み、テーマの本質を見極めようと意欲的に行われるのです。
 
 さて今年度の4コースは、①沖縄:自然と歴史・平和学習、②九州:再生可能エネルギと長崎の高校生と考える平和、③関西:日本の歴史・伝統の再発見と阪神淡路大震災から学ぶ、④四国となりました。
 
 ここでは④四国コースの魅力をご紹介しましょう。それは「馬路村(うまじむら)研究」と「四万十の自然と土佐の食文化」ともいえるものです。馬路村は高知県と徳島県の境の奥、剣山のふもと、そこをめざし高知市から車で約2時間走った山の中にあります。周りを1000m級の山で囲まれ、96%が森林に覆われた地域です。かつては林業で繁栄した時代もありましたが、その後、村の特産品として柚子栽培に力を入れ、柚子づくり、柚子を生かした商品開発・販売の仕組みを作り上げ、「人口1000人余の村の持続可能性への挑戦」(馬路村農協東谷組合長)として、その村おこしは注目されました。
 
 現在湘南学園が推めている「湘南学園ESD」に深く結びついたテーマであり、日本の山村が抱えている過疎問題のなか、「里山資本主義」を考える好例として、この馬路村の取組みに注目し、研修テーマに組み入れたといいます。柚子という特産品に加え、観光資源の掘り起こしにも力を入れ、温泉を村の観光スポットの1つにしました。夏休みなどの繁忙期は良いのですが、1年間の経営が成り立つという視点をもたないといけないと東谷農協組合長さんは指摘します。全国のお客さんに柚子製品を直接売ることで、そのお客さんたちが馬路村に遊びにきてくれたり、面白い村おこしをしているということでの視察関係者の訪問などがあり、馬路村温泉施設を利用していただくというサイクルを大事にしているようです。
 
 活動班として、「間伐」「柚子収穫・絞り」「柚子化粧品」「曲げ輪」などに別れそれぞれの取組みを体験します。こうした取組みから生徒の皆さんは、ここ馬路村の皆さんが目標にむけてどのような取り組みを進めているのか、そこでの悩みは何かなどその現実をしっかり見据え、日本と世界が抱えている課題に結びつけて、高校生らしい提案を生み出すきっかけをつくって欲しいものです。

 馬路村研究を終えると、高知県は西へ向かい、四万十の自然を満喫し、土佐の食文化を楽しみます。