第330回 豊かな日本の食材~その魅力を再発見する番組

2011年10月25日

 高2研修旅行の2日目です。各コースではそれぞれ、郷土の御馳走との出会いも楽しみなことでしょう。
 「食欲の秋」が進行中です。私たちの生命をまず直接に支えるのは、毎日の食生活です。今日はこのテーマについて、高校生や中学生にも視聴を勧めたい、あるテレビ番組を紹介します。

 『食彩の王国』という料理・紀行番組です。テレビ朝日で土曜日の朝9時半から毎週25分間放映されています。BS朝日ではだいぶ前の分の再放送をしています。毎回ごとに違うポピュラーな食材を1つずつ、その魅力と歴史、全国各地の生産者の思い入れや優れた調理法などが紹介されます。ナレーションは薬師丸ひろ子さんで、その語り口の温かさは印象的です。蛇足ですがスポンサーのCMもなかなか惹きつけられます。

 ここ最近、番組で扱われた食材を並べてみます。・・・・・・「なす」「みょうが」「ささみ」「トマト」「もやし」「中華麺」「ひき肉」「大黒サンマ」「たまご」「さつまいも」「秋サバ」でした。先日放送された「さつまいも」を例にとって紹介してみます。
 さつまいもは「薩摩芋」であり、生産量日本一は鹿児島県です。味も見た目もいろんな種類の薩摩芋が作られています。火山灰の土地が広くて米作の難しい薩摩の地で、この芋は古くから人びとの主食になりました。
 江戸時代には青木昆陽の普及でも知られるように、薩摩芋はたびたびの飢饉からも人びとを救い、幕末に活躍したこの地域にとって不可欠の作物でした。一年中美味しく食べられるように調理に工夫がこらされ、毎日の蒸かし芋からおやつ、おもてなしの一品まで薩摩芋料理は多彩に発展しました。
 芋焼酎も薩摩を代表する食文化の1つです。老舗の焼酎蔵の5代目の方が、今は亡き父親との約束を守り、仕事の大先輩でもある母親と二人三脚で伝統の製法を守る姿は特に感動的でした。貧しい幼少時代に薩摩芋ばかりよく食べて育ったというフラ
ンス料理の著名なシェフが、苦い思い出を乗り越え、知り尽くしたこの食材の魅力を存分に引き出す創作料理を次々と形にしていく様子も描かれました。
 NHKの『産地発!たべもの一直線』も同様のテーマに沿った素晴らしい番組です。こうした番組から、改めて日本全国の食文化は何と多彩で、貴重であり、皆で支えられるべき奥深い文化であるかをしみじみと知ることができます。我々のお馴染みの食材には、その生産と調理に長く関わってこられた大勢の人びとの努力と思い入れが注がれ、結実しているのです。