第553回 “英会話の挫折から救い出す”知恵をくれる本

2012年10月31日

 読書の秋なので、最近出会った好著をひきつづき紹介してみます。
 今回は、『英語が1週間でいとも簡単に話せるようになる本』、(西村喜久著、明日香出版社)という本です。ふだんは嫌気がして通り過ぎるような“どぎつい書名”ですが、手にとってみるとその主張にひかれました。“英会話部門~年間売上げ第1位”との大書店の展示に納得がいく感じで購入しました。読んでみて“よしやってみよう”という元気をもらいました。

 湘南学園は近年、海外セミナーを世界各地に拡充してきました。豪州のノックス校との交流など、英語圏の人たちとコミュニケーションをはかるべき機会が増えてきました。自分は経験不足でブロークンな英語に自信はなく、でも試してみると意思の疎通は何とかそれなりに出来るのだとの手応えも得ました。
 「日本人は英会話が苦手」は定評です。でもあきらめずに一定の姿勢を身につければ何とかなるのかな、とも考えました。この本はそんな問題意識にクリアーに応えてくれ、確かなメソッド(方法)を提示していました。
 “必ず<英会話・挫折>から救いだします!”とのキャッチフレーズは誇大広告のようで、一定の説得力を感じられました。「外国の人と少しは話せるようになりたい」気持ちと、「若い頃それなりに英語も勉強したけど、実際には言葉が出ずに立ちつくす」不安との間に、丈夫な橋をかけてくれる本かなと思われました。

 西村先生の主なメッセージは、自分の言いたい事は少しの工夫で、いろんな表現OKで、ちゃんと英語で伝えられますよ、ということです。日本語と英語の違いをある程度理解し、「暗記した英語にしばられず」、「人それぞれの意思と発想力で表現してみる」姿勢を持つことを説いています。
 たとえば、「今日はいい天気ですね」と言いたければ、Oh! Nice day, isn’t it? Today the sky is so blue! The weather is fine! Today we have a beautiful day! などいろんな表現があるし、「みんなちがってみんないい」と例示されます。
 「暗記英語では思い出せないとおしまい」だが、通じる英語は「情景で<言いたいことを>発想して相手に伝える」のが大事であり、「こうするとああなる」の因果関係が成立し、文法が正しければ、すべて通じると説くのです。
 「あぶないよ!」ととっさに声をかけるべき時に、ただDangerous!ではどう危険なのか伝わらない。Hurry back! Don’t move! Look behind! 等どうすればいいか伝えるのが先決だと説明します。
 「日本語=英語」と考えるから言葉が浮かばない、「何がどうなるのか、何をどうすればいいのか」と因果関係で発想して英語にするとちゃんと通じる。これを西村先生は「情景発想法」と読んでおり、この方向で道を開けたおおぜいの教え子たちを確認できたそうです。

 その後この本では、様々なポイント講座が展開されます。特に「主な動詞の使い方をマスターすると、驚くほど英語が使えるようになる」という観点から、say,have,take,get,giveという「5大動詞」やその他の重要な基本動詞の「本来の意味」と「日常での活用例」を示して、英語の表現力を一気に広げるコツを示します。また「7大副詞」のout,up,down,off,away,in,onの理解と活用、「ハイフンの法則」「長文の英訳の発想法」など、英会話上達の様々なポイントも伝授されます。

 後半はやや難しい部分もありましたが、「本当の英語を話すマインド」をつかんでもらいたい、不十分でも手持ちの単語・文法の知識を総動員して、相手とのコミュニケーションはちゃんと図っていけますよ!との希望を届けてくれる本でした。中年の我々に新鮮な希望を届けてくれ、海外研修へ参加した人やこれから参加したい人など在校生にも、有力な手がかりを届けてくれそうで、幅広く読んでほしい本だと思われました。