第555回 “チャイルド・プアの急増”を前にして

2012年11月2日

 先日見たある番組についてご紹介します。NHK総合の「特報首都圏」“チャイルド・プア~急増 苦しむ子どもたち~”という番組です。

 いま日本では、親の失業などから「給食費が払えない」「学用品が買えない」といった子どもの貧困が深刻になっています。嫌な言葉ですが、「チャイルドプア」と呼べる困窮下にある子どもが信じられないほど大勢いるというのです。
 就学援助を受ける小学生・中学生が増加の一途で、全国では約157万人、全体のおよそ6人に1人と過去最多になっているそうです。番組では、親の事業の失敗から借金を逃れて家族で転々と移動し、食事は一日1回の日々もあった例、母親のパート収入が少な過ぎて友達の遊びの誘いも断っている例などが紹介されました。貧しさと辛さからいじめの対象になったり不登校になったり、将来に希望が持てずにひきこもる例も出ていました。お金がないことで周囲と交流できずにひとりぼっちになっていく、広い世間との接点を失う子どもや若者が増えている、との深刻な報告でした。

 ユニセフによれば、OECD加盟の数多くの先進国の中で、「子どもの相対的貧困率」調査では、日本はワースト4番目の状況にあるそうです。
 そうした子ども達の孤立を防ぎ、自信や展望を持てるようにするため、様々な努力も進められています。NPOなど諸団体の人びとの粘り強い献身的な取り組みです。「さいたまユースサポートネット」が運営する、大学生のボランティア達が週2回無料で学校の勉強を教える学習教室や、学校の代わりに臨床心理士の資格を持つスクールソーシャルワーカーが家庭訪問して、同じ目線で長時間付き合っていく取り組みが紹介されていました。
 長い間学校に通えなくて学力不安の子ども達が、学ぶ楽しさと触れ合いの喜びを感じ、元気を取り戻す姿があり、定期的な家庭訪問により相談相手を務めるスタッフに、安心して話しかけていく姿がありました。

 貧しさは、程度の差はあれ、わが学校時代の基本的な状況でもありました。時代は進んでこの現在、日本の社会にこのような格差と貧困がおおぜいの子ども達を直撃していることを憂えます。このような現実が続いていることを十分心に留めて生活し、仕事をしていかなくてはと思いました。