第208回 感動あふれる高校卒業式

2011年3月7日

気温が上がった昨日から一転して、雨さらに雪が降って肌寒い一日です。
今日の午前中は家庭学習の扱いで、教員は採点処理などの業務となります。
生徒諸君は午後に登校し、PTA教育文化事業でお招きしたINSPiのコンサートを鑑賞し、帰りのHRとなります。
 
土曜日の高校卒業式は、感動に満ちた素晴らしい式典となりました。

今年度から卒業生一人ひとりに卒業証書を授与しました。皆勤賞授与は1年間、3年間、6年間と対象者がとても多い学年で驚きました。小中高12年間皆勤賞 の山崎璃子さんの時にはひときわ盛大な拍手がわきました。相当の遠距離通学にもかかわらず、この快挙をなしとげた本人の努力とご家族のご尽力を思うと、私 も胸がいっぱいになりました。

在校生代表・高2河村麻衣さんの送辞では、何事にも妥協せず一生懸命取り組んだ先輩方への尊敬と、自分達が替わって担った学校行事の経験を中心に感謝と励ましの話がありました。
 
体育祭実行委員長を経験した立場から、下級生を指導して造り上げた先輩の奮闘と苦労を、今度は自分達が受け持って試行錯誤しながら学んだとの話に、こう やって伝統は築かれるのだと共感しました。卒業生代表・不破有沙さんの答辞は、深い感銘を皆さんに伝える内容でした。自分達の学校生活を支えてくれた方々 へのお礼の言葉は、用務員や警備員の方々、購買部の方々、図書室司書や保健室の教員、学年・全校の教職員、そして家族の方々へ、先輩・後輩・同輩の友人達 へと続きました。丁寧で心のこもる謝辞に 感動するばかりでした。自分を励ましてくれた“あなた”達への“ありがとう”の言葉には詩情がありました。この学園で得た友人を宝に、経験を糧に、これか ら得る様々な出会いの中で素敵な人間へと成長します、との誓いで結ばれていました。生徒会総務委員長として常に生徒会活動の原点を考え、仲間と共に新たな 課題に向き合っていたリーダーらしい、素晴らしい答辞でした。
 
例年通り吹奏楽部のすてきな演奏と、生徒会総務委員会諸君のサポートも受けて、感動あふれる高校卒業式を行うことが出来ました。会場を去る卒業生諸君と学年会スタッフを見送って、温かいお祝いの拍手が長く続きました。
その後、クラス毎に生徒諸君と保護者の方々も一緒に記念写真の撮影、そして最終のHRがありました。保護者の皆様方には、その夜に行われた卒業を祝う会も含めてご参加ご尽力、誠にありがとうございました。



 
卒業式における校長式辞を、以下にご紹介いたします。

卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
本日の第59回高等学校卒業式には、
学校法人を代表して、常務理事の堀田様、
PTAを代表して、PTA会長の辻様、
そして全学を代表して、仲本学園長先生、
以上の方々のご列席を頂いております。慎んでお礼を申し上げます。
 
卒業生の皆さん、まず私が思い出すのは、数々の学校行事で、皆さんが高い目標を持って取り組んでいた姿です。自主性や積極性がすごかったことです。
まず1年前の、高2最後の合唱コンクールのことを思い出します。
どのクラスも難しい曲に挑み、見事なコーラスを聴かせてくれました。
私は中2の担当でしたが、高校の部がすごそうだとの噂もあって、先輩達の合唱を午前中に見ておきたいと、80名もの見学希望者が出たことには驚きました。
体育祭では、色別連合の団結と高2の先輩達の頑張りに、中学生達が感動していました。自分達も先輩達のようにいずれ高い目標を持って頑張るんだ、という自覚が育っている様子を、嬉しく感じていました。
また皆さんが高1の時、中学1年で始めた放課後学習会に、先輩達がサポーターとして勉強の面倒を見てみたい、と教室に入ってくれた想い出もあります。
短い期間でしたが、皆さんの自主性、積極性を、こんな場面でも感じたものです。
 
さて、皆さんの現在の状況には、様々な違いがあります。
第1志望の大学や専門の学校に見事に現役で合格した人達や、これから大事な発表を待つ人達もいれば、今回は届かずに来年春へ向けて捲土重来を期すことになった諸君もいます。この差は、たしかに大きなものです。
しかし皆さん、人生は長い道のりです。この先には、いくつもの重要な人生の岐路があります。その時々で、皆さんそれぞれが自分の進路を選んでいくのです。
 
大切なことは、生涯につながる、揺るぎない幸せを築いていくことです。
自分が選んだ道を、大きな希望を抱いて進んでいくことが、幸福の土台だと思います。人間は、希望なしには元気で生きていけません。
しかし希望は叶わないこともよくあります。失望に変わったり挫折に直面することもあります。それでも人間は、その経験を踏まえて次の希望へと修正していくことができます。辛かったことも糧にしてその分強くなって生きていけるのが、人生の奥深いところだと思います。
自分の選んだ道には誇りを持ち、生涯にわたって学習や研修を心がけ、様々な取り組みに習熟して、自信をつけていきましょう。
 
私は、人生の岐路を経た後で、「これで良かったんだ」という振り返りが出来ることが、大切なのだとよく感じます。進学も、就職も、そして結婚もそうです。
自分がたどってきた道のりを、肯定して統合することが、大事だと考えます。
その場を拠点として、また新しい夢や目標を持って生きていくことが、幸福の要諦であると思うのです。
 
さて、皆さんがこれから旅立つ国際社会と日本は、「グローバル化時代」に伴う様々な問題に直面しています。世界経済も、地球環境も、深刻な危機を抱えています。国家間や企業間の行き過ぎた競争は、なかなか是正されていません。
日本の大学では、学生達が就職難に不安を強め、過剰な「就活」の圧力にさらされています。多数の人びとの雇用や生活が不安定になり、「無縁社会」と呼ばれるほどに、周りと絆を結べない人びとが増えています。
先進国日本は、かつての経済的栄光や、それなりの社会の安定を失いつつあるともいわれます。人びとの間には不安や閉塞感が、静かに広がっています。
 
しかし皆さん。社会には困難が累積していますが、あなたが輝く場所、自分の能力や持ち味を発揮できるポジションは、必ず見つけられます。
 
先日、ある大手新聞社の採用責任者の方の講演を聞く機会がありました。
「これからの社会で求められている人材とは」、というテーマでした。
就活でいそがしいおおぜいの大学生達と面接や懇談を重ねてきた方です。
一番重視するのは、新聞記者に必要ないわば「人間力」であると話されていました。
もっとも大事なのは「取材力」、つまりどんな人とも会ってコミュニケーションできる力、出会った人間や事件を前にして素直に話や状況をつかみ、わかりやすい表現に努める力である、とも説明されていました。
もっというなら、様々な現場やデータに純粋な好奇心を持ち、いわばスポンジのように素直に吸収する意欲があることが望ましい、柔軟な感受性や思考力のある人が伸びていく、と話されていました。
 
いまの大学生達を見ていると、「就活をしなくては」のあせり、「これもあれもしなくちゃ」の不安ばかりが先行し過ぎている、と感じられるそうです。
採用する立場からすると、もっとシンプルに「何より新聞記者になりたい」「こんな仕事をしてみたい」という意欲ある人が欲しい。できれば芯の強い人で、いろんな世界との接触を厭わずに、信頼関係を拡げられそうな人がいい、とのお話でした。
 
以上のお話には、どんな世界にも通じる、若い人達への普遍的な期待がふくまれていると思います。
そして実は、ここにいる皆さんはこの学園で、友人や同級生、先輩達や後輩達と力を合わせて様々な活動に取り組み、将来につながる貴重な経験を、人一倍重ねてきていることにも、気づいて欲しいと思います。
体育祭・学園祭・合唱コンクールを筆頭とする学校行事や、それぞれ目標を持って仲間と頑張り続けたクラブ活動、社会に生きる様々な人びとに出会いながら6 年間続けた特別教育活動。みんな大切な体験・交流でした。高3の特活でも、皆さんはバンバン委員に立候補し、積極的に運営に参加していました。
 
この春から、または来年春から、皆さんは新しいキャンパスで生活を始めます。
そして数年後には、それぞれが選んだ仕事のステージで、縁あって遠くから集まった人たちとの新たな出会いを得て、交友関係を拡げていくはずです。
一方で、将来の自分の行き先は、職場も、住まいを持つ地域も未定です。
しかもその先の人生には、たくさんの予想もつかない変化があるものです。
でも、誠意と意欲さえしっかり維持できれば、どこへ進んでも大丈夫です。
 
皆さんには、どこへ行っても広く周りを見て、自分から進んで声をかけ働きかけ、新たな拠点とつながりを求めて、積極的な生き方をして欲しいと思います。
自分が選んだ舞台で、専門性を磨き、新たな協力や、切磋琢磨し合える人間関係を広げて、元気で生きていただきたいと思います。
 
湘南学園の建学の精神を、皆さんはご存じですか。
それはこのように表現されています。
 
「個性豊かに、身体健全、気品高く、明朗で実力があり、
社会の進歩に貢献できる、有能な人間の育成」

です。
一言でいうならば、「社会の進歩に貢献する、明朗で実力ある人間」が、本校の教育目標です。
 
社会の様相はたしかに厳しいですが、環境や生命を大切にし、持続可能な、温もりのある社会の再建を目指す取り組みも、実は燎原の火のように広がっています。
そんな動きにもしっかりと目をとめながら、どうかこれから先も、新しいつながりを豊かに築いて、充実した人生を切り拓いていってください。
 
以上で、私からのお祝いの言葉といたします。