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成長を支える

2016年7月26日

 いろいろな所で、いろいろな方にお会いします。そんな中、身近な方の中に、湘南学園のご出身の方がおられたり、また子どもさんやお孫さんが湘南学園に在籍されていたりということもしばしばあります。学園の長い歴史、また地域に根ざした学園ということを感じる場面です。
 
 湘南学園ご出身で各方面で活躍されている方はたくさんいらっしゃいますが、そのお一人に歌手で作曲家の平尾昌晃さんがおられます。
 七夕の七月七日、「七夕」で有名な平塚を舞台に、平尾さんが主催される「認定NPO法人ラブ&ハーモニー基金」による福祉コンサートが開催されました。平尾さんと福祉との関わり、あるいはこのコンサートについては、本学園「中高「校長通信」」に詳しく記してありますので、よろしければそちらもご覧いただければありがたく思います。
 
 そのコンサートに本学園中高の合唱部も参加することになりました。平尾さんは、お忙しいスケジュールの合間を縫って合唱部を指導されるために来園してくださいました。笑顔の平尾さんが後輩の合唱部員にかけてくださる温かなアドバイスは、合唱部員の勇気となり自信となったように、見ていた私には思えました。本番での合唱部の堂々たる、そして見事なハーモニー、平尾さんのご指導の大きさを感じた次第です。
 
 レッスンが終了した後、平尾さんにゆっくりお話を伺う時間をもつことができました。その際に、平尾さんから思わぬエピソードを伺いました。それは平尾さんが、「僕は卓球が得意だった。中学の時優勝したことがある」というお話でした。『湘南学園 五十年の歩み』を繙くと、昭和26年度の項に、8月10日「市内中学校卓球大会参加 中2平尾昌晃優勝」と栄光の記録が記されていました。

湘南学園創立80周年記念音楽祭
チャリティーコンサート

 お話を伺った折、「どういう練習をされたのですか」とお尋ねした所、「特別なことは何もしていない。でも得意だった」というお答えでした。音楽の分野で素晴らしいご活躍をされている平尾さんの別の一面を垣間見たように思いました。抜群の運動神経と集中力、音楽の分野におけるご活躍と無関係ではないのかもしれないと勝手に思ったりしています。
 
 平尾さんは学園での思い出をとても大事にされ、本当に懐かしそうに学園の良さを振り返っておられました。平尾さんが湘南学園70周年記念誌に寄せられた文章の中に以下の一節があります。
 
「僕達の若かりし頃の湘南学園は、まぶしく輝いていて、日本にひとつしかない、素晴らしい学園と誇りを持ち、胸を張っていました」

 平尾さんのこの言葉に勇気をいただきながら、目指すべきはまさにそのような学園であると決意を新たにしています。
 


 七月は、幼稚園最大の行事ともいえる「さくらわくわくデー」(年長組お泊り保育)が行われる月でもあります。

 私は前日の準備の様子を見せてもらい、当日には年長さん手づくりのカレーライスを一緒にご馳走になりました。園児が事前に野菜等の買出しに出かけ、野菜を切ったり等の準備を行い、先生方のご指導のもとで作ったカレーライスです。格別の味であったことは言うまでもありません。
 
 それだけではなく、「さくらわくわくデー」を通じて感じたことが二つあります。
 ひとつは、「園児の成長」についてです。「幼稚園だより(NO.8)」に興味深い話がありました。それは、当日に向けての園児(年長さん)の話し合いのことです。ご飯のこと、どのようなことをして楽しむか等、意見を出し合います。その中で一番話題になったのが「寝る時の布団」のことだったそうです。少し長くなりますが、上記「幼稚園だより」を引用します。

「じゃあ、家から布団を持ってくればいいじゃない?」「えー、だって家んちは妹と一緒に寝ているから布団持ってきちゃったら、妹が寝れない!」「家もお母さんと寝てるから、お母さんの寝るところがなくなっちゃう!」「じゃあ、ダンボールを敷いて寝たら?」「それいいね!」「でも木の板を敷いて寝るのは?」「良い気持ちかも?」「わらの方がいいんじゃない?」「でも、片付け大変じゃない?」「そうしたら、実験してみたらどう?」ということになり、子ども達は『ダンボール』『板』『わら』を実際に敷いて横になって体験してみました。

 
 その結果、何と『わら』がいいと思う子がたくさんいたということで、その可否を子どもたちが事務局に行って尋ねたということでした。事務局は、丁寧に、お泊りの部屋に『わら』は敷けないこと、布団が沢山ほしいときは、布団屋さんが貸してくれるので、布団屋さんにお願いしたらどうですか、と子どもたちに話してくれたということです。子どもたちは納得し、結局、布団屋さんに頼むことになりました。「幼稚園だより」は、さらに続きます。

このように、ひとつひとつ子ども達の思い、考えを出し合い「さくらわくわくデー」に向かっていきます。大人の感覚ですと「それは難しいから、できません。」とすぐに判断してしまいますが、子ども達の純粋な思い、考えに寄り添いながら、実現できるかどうかを模索し、解決しようとする力を育んで欲しいと願っています。

 
 教育には「待つこと」の大切さがあります。また、子どもたちが「自ら育つ」ことへの期待と確信も大切です。先回りして答えを提示するのではなく、子どもたちに考えさせ、相談や実践をさせながら、子どもたち自身に答えを探させる。「寝るときの布団」の話は、本学園幼稚園における教育哲学、指導理念の顕著な例と感じています。この教育哲学、教育理念が子どもたちの成長をしっかりと支えていると考えています。
 
 もうひとつは、年長さんの成長を支える存在についてです。
 この「さくらわくわくデー」に向けて、年中さんが部屋の飾り付けをしてくれたと聞きました。また、小学生(本学園幼稚園卒業生)が、当日、門の外から後輩の年長さんを応援している(心配している)姿が見られました。「来年はぼくたち(わたしたち)が経験する、昨年(一昨年)は、ぼくたち(わたしたち)が経験した」。「さくらわくわくデー」が、子どもたちの成長の節目となる行事であることは間違いありません。保護者の皆様のご理解とご支援、先生方の指導、事務局等の陰の支援に加えて、後輩(年中さん)や先輩(小学生)もまたこの行事を支えているということを感じました。

 

 私の手元には、小学校、中高の担任の方々の学級通信が届きます。それぞれの先生が工夫を凝らした、また児童、生徒の成長を後押しすべく発行されている学級通信を楽しみに読ませてもらっています。児童、生徒の生の声が窺え、また先生方と児童、生徒の交流が読み取れるのも学級通信の魅力です。
 そんな中、小学校、中高に毎日学級通信を発行されている方がいます。毎日というのは簡単なことではありません。敬意を表しながら拝読しています。
 
 小学校で毎日発行されている方の学級通信に「イチロー」の話がありました。その先生は、イチローが渡米した年に現在のスタイルの学級通信を開始されたそうです。そして、何とその先生の学級通信も間もなく3000号になるというのです。

 学級通信には、「イチローのように淡々と仕事を積み重ねていきたい」とありました。淡々と積み重ねることの難しさを知っている方のみが書くことのできる言葉かと思います。心より敬服し、感想とお礼の言葉をお伝えしました。
 この先生のみならず、目立たないところで、目立たない形で、子どもたちの成長は支えられ、後押しされています。
 
 学級通信の中に、小学校の先生が中学校の剣道や野球の試合を応援に行かれた話がありました。学園中学校に進んだ教え子が成長し活躍している様子が、そしてそれをうれしく頼もしく感じながら応援されている様子が、鮮やかな筆致で描かれています。卒業後も同じ学園に学ぶ教え子を見守り励ます先生。ここにも総合学園の良さと可能性を感じます。

 

 野球と言えば、湘南学園中学校野球部が、藤沢市大会で、1回戦、2回戦に勝利したといううれしい報告を聞きました。数年ぶりの立派な結果ということです。
 そして、高校野球部も、全国高校選手権神奈川大会1回戦、生田高校相手に堂々たる戦いを行いました。かつて神奈川県高野連会長等をつとめていたこともあり、多くの試合を見てきましたが、この試合は、見ているものに感動と勇気を与えてくれた見事な試合でした。8対7で惜しくも敗れはしたものの、今後の大きな飛躍を予感させる試合であったことは、試合翌日の朝日新聞にも大きく報道されたとおりかと思っています。

 7月19日、幼稚園と小学校の終業式でした。小学校校長に声をかけていただき、終業式を終え下校する時間帯に玄関に出向きました。

 守衛さんに親しそうに声をかけている子どもがいます。ニコニコしながら守衛さんが対応されています。ここにも支えてくださる方がいます。

 1年生のある児童が「のびる芽」(通知表)を見せてくれました。丸が一列にきれいに並んでいました。「頑張ったね」と声をかけました。不安と緊張気味の中で入学した一年生も四カ月目を迎え、すっかりたくましくなりました。
 晴れやかな表情で下校する1年生から6年生の児童を見ながら、確かな成長を感じています。
 
 いよいよ夏休み。園児、児童、生徒が、いろいろなことに挑戦し、一段と成長する夏になることを大いに期待しています。