さまざまな「秋」
木々の色づきに、朝夕の冷え込みに秋の深まりを感じる候となってきました。爽秋から晩秋へと少しずつ季節が進んでいる感を覚えます。
学生時代に読んだ作家の一人に清岡卓行がいます。自分にとって大切な本が収めてある自室のガラスケースの書棚には、他の本と共に清岡の小説や随筆、詩集が並んでいます。その清岡の『随筆集 窓の緑』の中に『「秋」という文字』という作品があります。
書き出しのこの一節に詩人でもある作家の豊かな感性を感じます。そして、心なしか、秋についての印象がさらに奥行きをもつような気もしてきます。
清岡は、「いね科植物が頭をたれたさまにもとづく『禾』と、火が燃えるイメージにもとづく『火』という二つの象形文字が組み合わされた『秋』という形声文字の美しさ」について思いを巡らせていきます。辞書の意味だけではなく、映画や詩にも言及し、さらに、旁の「火」はどんな種類の火だろうかと様々な想像を試みた上で、次のような結論を出しています。
「秋」にはさまざまな形容があります。読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、そして収穫の秋や食欲の秋もありそうです。
十月は、学園にもさまざまな秋がありました。
まず、スポーツの秋。幼稚園では「らんらんにこにこらんど」、そして小学校では「たいいく表現まつり」という大きな行事が行われました。
10月9日、幼稚園の運動会「らんらんにこにこらんど」が学園アリーナを会場に行われました。競技に、ダンスに、そしてゲームに、年少、年中、年長のみなさんが、アリーナ狭しと力一杯躍動しました。
入園後半年の年少さんを始め、年中さん、年長さんが、それぞれ練習を重ねた成果を十分に発揮し、その成長ぶりを感じました。とりわけ、私が注目したのは、年長児の活躍です。ダンスの完成度、リレー競技における確かな走り。さらに、開会の言葉、閉会の言葉、プログラムの紹介、実にしっかりとその役目を果たしています。ゲームで使う道具の出し入れも含め、年長さんの活躍をうれしく頼もしく見せてもらいました。競技参加も含め随所でご協力をいただいた保護者の皆様には心より感謝申し上げます。
幼稚園の「らんらんにこにこらんど」の翌日、10月10日には、小学校の「たいいく表現まつり」が行われました。
湘南学園小学校では、運動会を「たいいく表現まつり」と呼んでいます。一年生から六年生が民舞に取り組む「表現の部」と競技種目で競い合う「運動の部」で構成され、加えて、応援の部では、赤、青、黄の三色に縦割りで分かれ、応援合戦を繰り広げます。
小学校運動会の特色のひとつでもある民舞については、創始者であり民舞を育ててきた河本洋子校長の閉会式における講評をそのまま引用したいと思います。
一年生から六年生まで、授業での練習に加え、朝練や昼の練習、さらには帰宅後の自主練習も含めて取り組んだ民舞は、河本校長の講評のとおり、「身体に染み込んだ」踊りであり、豊かな「表現」に感銘を受けました。
終了後に読んだ学級通信で知ったことも含め、特に、最後の「たいいく表現まつり」に臨んだ六年生の、競技、表現、応援、加えて運営さらには下級生指導等にみられた取り組み姿勢、自覚と誇り等は、目を見張らされるものがありました。
そして、芸術の秋。
10月1日、2日は中高の学園祭が行われました。学園祭は、体育祭、合唱コンクールと並ぶ学園中高の三大行事のひとつであり、学園祭実行委員の生徒を中心に学園中高生全員が一体となって取り組む行事です。私も、展示や研究発表、エンターテインメント企画、そして、演劇部、合唱部、吹奏楽部、ダンス部の発表等を見せてもらいました。力作があり、長蛇の列があり、心に届く発表がありました。加えて、食品販売企画も大賑わいでした。特に二日目の10月2日は、これ以上はない好天に恵まれ、多くのご来場者をお迎えすることができました。
「咲き誇れ」のテーマで開催された今年の学園祭、学園中高の日頃の成果を発表する機会になり、またクラスの団結の機会になり、生徒一人ひとりの成長につながる行事となったことを確信しています。
生徒が主体となって取り組む中高の行事にあっては、生徒自らが、今年の成果と課題をしっかりと分析し、次年度へつなげてほしいと思っています。
学園祭に関して言えば、多くの方々にご協力をいただいています。
同窓会の展示企画「Our History 遠足・修学旅行 今昔」は、本学園の遠足・修学旅行の変遷を視覚に訴えながら分かりやすく示されたものでした。それぞれの時代を感じさせる写真、日本地図上に示した行先等に学園の歴史の一端を感じとらせていだだきました。
また、カフェテリアも大勢の方々で賑わっていました。学園祭のためのメニューを加えていただく等の工夫を含め、大いに盛り上げていただきありがたく思っています。
そして、学園祭と言えば、同時に開催される本学園人気の「バザー」。PTA、後援会の方々の熱い思いが伝わってくる企画です。こちらもグランドが狭く見えるほどの大賑わい。私も、湘南学園のネーム入りのTシャツを妻の分も含め購入させていただきました。また、PTAのお父様方を中心とするサポーターズクラブの皆さんによる焼きそば、フランクフルト等の販売も大人気。汗びっしょりで調理されている皆様には感謝のみです。
ということで、芸術の秋のみならず、食欲の秋も加わっての学園祭、多くの皆様のご協力により、湘南学園のみならずチーム湘南学園としての行事になっていることをうれしく思うと共に、お力添えをいただいた皆様に心よりお礼を申し上げたいと思います。
さらに、収穫の秋。
幼稚園では、五月に年長児が全園児分のさつま芋の苗を植えました。大きく育ったさつま芋を収穫する「さつま芋掘り」が行われました。13日には年長さんが、14日には年中さんが、そして19日には年少さんが、それぞれ「収穫」を楽しみました。さらに、収穫後は、近くの公園でお弁当を食べるなど秋の一日を満喫した様子でした。
芋掘りから戻った年少さんのことについて、10月25日発行の「幼稚園だより」にぜひ紹介したい文章がありました。やや長くなりますがそのまま引用します。
もうひとつ、読書の秋。
湘南学園は、グローバル教育にも力を入れています。
私も、ハーバード大、MIT、スタンフォード大等を訪問した八月の視察旅行での学びを経て、グローバル教育を含む今後の湘南学園の教育活動の一層の充実に向けて、工夫や改善が必要と考えています。その中には、当然、英語教育の改善と充実が入ってきます。英語教育の充実と併せて重視したいのが、国語力の強化です。英語力、国語力の双方を高めながら、次代を担う人間を育てていきたいと思っています。国語力の強化に関して言えば、やはり読書の重要性を挙げなければなりません。
読書に関連し、中高図書委員会が、学園祭において、「走れ東北!移動図書館プロジェクト」「熊本地震、被災地の学校図書館支援」の一環として、「チャリティー古本市」を開催しました。お蔭様で、多くの方々のご協力により、売り上げを寄付することができました。
図書館の利用による読書も含め、湘南学園の園児、児童、生徒には、読書を大切にしてほしいですし、本に親しんでほしいと思います。読書について言えば、秋のみならず、季節を問わず勤しんでほしいと思っているところです。
さまざまな「秋」。湘南学園の今後の可能性を感じる十月です。