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第5回 若者を励ます珠玉の合唱曲~Nコン2018課題曲から

2018年4月18日

 3月に録画して最近くりかえし観ているコーラスがあります。今日はこの歌について紹介させていただきます。

 今年度のNHK全国学校音楽コンクール(略してNコン・今年は第85回)の課題曲で、中学生の部の『Gifts』という新曲です。
 作詞・作曲は歌手のSuperflyさん。『愛をこめて花束を』で自分も存じ上げていました。ごく小柄なのに声量ゆたかな圧倒的なボーカルが素晴らしいシンガーです。
 毎年Nコンの課題曲発表を楽しみにしています。今年は特にこの『Gifts』に強く惹きつけられました。自分にずっと誇りを持てない若者、人目をいつも気にして“自分なんて”とおちこむ生徒の皆さんにぜひ聴いてほしい、きっとポジティブな気持ちになれるよ!と勧めたいすてきな新しい合唱曲です。

 Superflyさんは、越智志帆という本名です。中学生の頃は意外にもコンプレックスの塊だったそうです。周りの人といろいろ比べて「あれがない、これがない」と引っ込みがちで、自分の好きなものさえ伝えるのを遠慮していたそうです。
 だから自分以外の人に向けて始めて作ったこの楽曲で、「自分が中学生だった頃にこんな曲があったら絶対歌いたいな」「何回も歌っているうちに元気になれそう」と思える歌づくりを目指したそうです。

 『Gifts』にはまず月が登場し、自分が投影されます。詩情あふれる歌詞と、掛け合うコーラスの組み立てが実に魅力的な楽譜(編曲は大田桜子さん)で、独自の世界を展開します。・・・・・・私にはこれがあるし、これがある。生まれた時からいろんな物を持っている。今の自分だけの欲求や希望がある。自分の存在に誇りを持ってポジティブな気持ちになろうよ!・・・・・・そんな願いがこの歌の通奏低音です。歌いながら自分に言い聞かせられる“言葉の引力”のある曲に、との彼女の願いが美しく仕上げられているのです。

 後半の始めに次のような歌詞があります。

人の波を進む 帰り道は
みんなそれぞれ みんなバラバラでしょ
(中略)
同じ人なんて いないから
孤独でも仕方ない

 心にしみる一節です。あなたはこの世にたった独りの存在であり、取り替えは効かない大切な人だよと語りかけられる思いになります。「個人の尊厳」という主題まで、温もりのある世界の中で想起されました。

 Superflyさんは中学生の時、学校の合唱イベントで、歌うことで自分を表現できる、素直になれる喜びや、仲間とハーモニーを築ける素晴らしさに目覚めたそうです。合唱団の中学生とのインタビューでも当時の切ない気持ちを素直に披露し、現在を生きる生徒達の悩みに率直に寄り添っていました。

 自分は疲れた時や悩んだ時に、最近いつもこの動画を観て初心にかえる思いになります。優しい気持ちになれます。
 全国でこの歌が流行し、数多くの生徒や若者がこの歌を伸び伸びとコーラスして、元気をもらえることを期待しています。
 興味を持たれた方は、ネットの動画で、テレビ放映時の「混声三部」と「女声三部」のコーラスをぜひお聴きになってみて下さい。

追伸
 けさ、越智志帆さんが昨日結婚されたとのニュースに接しました。おめでとうございます。あの伸びやかな力強い歌声を、これからも末長く聴かせてもらいたいです。