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「トップ・アスリート」とは -一日一日の重さ-

2017年5月31日

 五月も下旬となり、木々の緑が一層その濃さを増し、辺りを見回すと、色とりどりの花々が目に入ります。

 鵠沼界隈は緑が多く、それぞれのお宅では、木々や花々を丁寧に手入れされています。

 この時期、緑滴る木々、そして咲き競う花々を目にしつつ、小さな幸福感のようなものを覚えながら、駅から学園までの道を歩いています。
 
 幼稚園から届く『幼稚園だより』は、新年度第5号を数えることになりました。園児の様子が詳しく紹介されている『幼稚園だより』からは、私自身いろいろな気づきをもらっています。保護者の皆様も、お読みになって安心されたり、子育てへのヒントを得られているのではと想像しています。
 
 5月25日発行の第5号には、入園時には不安そうな表情が窺えた年少さんも、「朝「おはよう」と挨拶をすると小さな声で「おはよう」と返してくれたり、ニコッと微笑みかけてくれるようになりました」という一文がありました。「小さな声での『おはよう』」、「微笑み」。入園して二カ月近く、着実な成長が感じられると共に、心が和みます。

 同じ第5号には、「リーダー切符を受け取ってから一段と張り切っている年長さんは、様々な場面で主体的に行動しています」とあり、主体的に行動している例が具体的に紹介されていました。

 5月27日は年長父親参加保育。ほぼ全員のお父様が参加され、園児の活動をご覧いただき、またそれぞれのお子様との交流を楽しんでいただきました。歌の発表の場面では、張り切って歌う年長さんの歌声が幼稚園ホール一杯に響き渡り、私もその声に圧倒される思いとともに大きな拍手を送りました。よく揃った声、堂々とした態度、確かな成長を感じた次第です。
 
 年少さんも二年後には、そして年中さんは一年後には、「様々な場面で主体的に行動する」年長さんになります。日々のわずかな成長の積み重ねが、一年後の、そして二年後の大きな成長につながることを思うと、改めて一日一日の大切さを感じます。

 中高では、5月17日に年間の主要行事のひとつ体育祭が行われました。今年の体育祭は、曇り空に時折薄日が射し、気温も高からず低からず、爽やかな風も吹くというこれ以上はないコンディションに恵まれました。

 五色に分かれ縦割りで行う体育祭は、横のつながりと縦のつながりが織りなす貴重な行事です。選手と応援が一体となる体育祭は、最後の種目である色別対抗リレーで最高潮に達しました。そこには、各色ごとの一体感もさることながら、学園全体の一体感を感じさせるものがありました。
 
 私は各競技やアトラクション演技等、体育祭全体における生徒の活躍を大いに楽しませてもらう一方で、脇役やいわゆる裏方にも注目していました。体育祭は、華やかなアトラクション演技や緊迫したリレー、あるいは力強い騎馬戦などに目を奪われがちです。もちろんそれらは体育祭の醍醐味であり、体育祭を構成する大事な要素であることは間違いありません。一方で、脇役であったり、あるいはいわゆる裏方として奮闘している人が体育祭を支え、体育祭を盛りたてていることも事実です。

 その点で、例えば、アトラクション演技の脇役として登場したマスコット「恐竜」は、入念な作業が窺える誠に見事な出来栄えと感じました。実物を模し丁寧につくられた「恐竜」は、台車に乗り自由自在に動き回り、ダンス等の演技を盛りたてています。
あるいは、各色のパネルは、細部までの丁寧な仕上がりに確かな準備を感じました。

 また、実行委員会の招集係、決勝審判係、用具係等各係の取り組みも評価したい点です。互いに声を掛け合いながら、地道な作業に黙々と取り組んでいました。実行委員会の生徒の皆さんの献身的な努力に感謝しつつ、その「見えない力」が、競技や演技等の「見える力」を支えているということを確認する思いでした。そうした点においても、今年の体育祭は、大いに評価できる内容であったと感じています。閉会式の挨拶で、「見える力」を支える「見えない力」、あるいは支えることの大切さについて生徒に伝えながら、学園生の豊かな可能性を改めて感じています。
 
 体育祭の今年のテーマは、「一年を全力で走り切るそのきっかけとなる体育祭」、そして、スローガンは、「NON STOP」です。このテーマとスローガンを受けて、私は、体育祭のパンフレットに以下の言葉を寄せました。

「青春」と書いて、「NON STOP」と読む。
「NON STOP」と書いて「2017年の湘南学園」と読む。
「2017年の湘南学園」に、みなさんはどのような軌跡を描くのでしょうか。
一年後のそれぞれのゴールを目指し、いよいよスタートです。 

 一年後に、中高生がどのような成長を見せるかが楽しみですし、そのためにも一日一日を大切に過ごしてほしいと願っています。
 
 小学校では、5月22日に元サッカー日本代表北澤豪氏をお招きしての講演とサッカーの実技指導がありました。

 朝日新聞社、朝日小学生新聞社、日刊スポーツ新聞社主催、株式会社トンボ協賛で全国的に開催されている「VICTORYスポーツ教室」の一つとしての催しでした。

 北澤豪氏と言えば、私などは北澤選手としてよく存じ上げているサッカーの往年の名選手。今回のご来園を子どもたちと共に楽しみにしていました。
 
 学園小学校五、六年生全員と希望された保護者の方を前にしての北澤氏の講演に先立ち、主催の日刊スポーツ新聞社の方がご挨拶をされました。

「皆さんはスポーツ新聞を読む機会は少ないかもしれません」と話は始まりました。
「スポーツ新聞の一面にはトップ・アスリートが載ります」。そして、子どもたちに、「トップ・アスリートはどのような人だと思いますか」という問いかけがあった後の言葉が、私の心に深く響きました。

 トップ・アスリートとは、単純な地道な努力を繰り返している人です。

 他の人よりも一回多くやる。あるいは、取り組む姿勢をちょっと変えてみる。「一回多く」、あるいは「少しの工夫」、それぞれ一日一日にすれば小さいのですが、それが一年、二年となると大変に大きな差になります。トップ・アスリートと一般人の違いはそこにあります。少しの差の大切さを、これからの人生に生かしていくことができたらとてもいいのではないでしょうか。

 トップ・アスリートとは、「単純な地道な努力を繰り返す人」。心に深く響きました。
 
 そして、北澤氏の講演が始まりました。北澤氏は、現在は日本サッカー協会理事を始め、多くの要職に就かれご活躍中です。小学生を対象に話をするのは初めてという講演は、「このような機会を得たことは大きなチャンスととらえています。今日の話が何年か後に生きて、皆さんが活躍することを期待します」と始まりました。ご自身の少年時代、サッカーについて、「もの」「時間」「仲間」の大切さ、夢の実現に近づくために大事にしたいこと、自分を知ることの大切さ等、数々の貴重なお話を伺うことができました。

 講演も随所に工夫のあとが感じられました。話だけではなく、話の途中で、サッカーボールを材料に、サッカー、卓球、空手、ピアノを習っている児童を壇上に上げ、サッカーボールを持たせて「大事なものをどう扱うかをサッカーボールを使って表現してみよう」と子どもたちに問いかけたり、その後、また講演に戻り、最後に近い場面で、サッカーボールと椅子を使ってのシュートゲームを行い、それを踏まえて最後のまとめの話に入るなど、小学生を心を掴み、話に引き込んでいく展開は印象に残りました。

 最後の児童との質疑応答で、「試合などで不安を感じることはなかったですか」という問いに対する北澤氏の答えは、忘れ難い言葉として心に残りました。

 「準備がすべてです。準備をしっかりやって試合を迎えるしかありません。みなさんのテストもそうでしょう?ラッキーはありません」

 おそらく、北澤氏も、この講演会のために入念な準備をされたに違いないと思っています。「今日の話が何年か後に生きて、皆さんが活躍することを期待します」という北澤氏の願いはきっと子どもたちに伝わったと思います。
 
 その日お会いしての第一印象は、鍛錬されているお身体ということでした。実技指導における切れ味鋭い動きを拝見して、日頃から鍛錬、精進されているという予想は確信に変わりました。
 
 トップ・アスリートである北澤豪氏、現役時代はもとより、今も一日一日を大切に、地道な努力を積み重ねられていることを感じさせていただきました。

「トップ・アスリート」とは、「単純な地道な努力を繰り返している人」。一日一日の重さとともに、改めて心に刻みたい言葉です。

<関連リンク>
【幼稚園HP】
5月27日(土)年長父親参加保育(今日の幼稚園)
 
【小学校HP】
北澤豪氏 本校に来たる!~サッカー元日本代表~(校長日記)
サッカー元日本代表・北澤豪さんによるスポーツ教室開催(学びブログ)
 
【中高HP】
第1335回 新緑輝くなかで歓声こだます(校長通信)
体育祭の模様を紹介します!~その1~(学びブログ)
体育祭の模様を紹介します!~その2~(学びブログ)