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第248回 高校卒業式答辞・SDGs児童参加

2022年3月23日

 今回は、学園生の取り組みに接して感銘を受けた、最近の場面についてご紹介します。

 3月5日の湘南学園高等学校卒業式における高3卒業生代表の答辞、および3月12日に藤沢駅サンパール広場で開催された、藤沢市主催の[ふじさわ元気バザール」の中の『SDGsマルシェ』に参加した、学園小学校4年生の発表展示についてです。
 いずれも様々な体験や苦労やチャレンジを通じて、たくましく成長していく学園生たちの姿から深く学ぶ貴重な機会になりました。順にご紹介していきます。
 
 高校卒業式は高3卒業生と保護者、教職員と生徒会総務委員が参集してアリーナで行わました。式後の制約も残りましたが、こうして挙式できたのは3年ぶりのことでした。
 恒例の「送辞」の担当者は、生徒会総務副委員長の高2光永智博君でした。学園祭実行委員や研修旅行委員も務めて仲間の人望も厚い生徒です。
 コロナ禍で列席できない在校生を代表して感謝の気持ちをしっかり伝えたいと、一学年上の先輩達と出会った5年前に新生活を優しくリードしてくれた想い出や、合唱コンクールなどで笑顔いっぱい頑張る姿へのあこがれ、全国臨時休校とその後の制約で絶望的な状況から体育祭や学園祭を創り上げていった粘り強い姿に学んだことなどを述べ、卒業後は大海原にそれぞれの帆を立てて人生の物語を進めてくださいとのメッセージを寄せました。

 「答辞」の担当者は、生徒会の前総務委員長を務めた高3瀧川理紗子さんでした。学園小学校の時代には児童会委員長も務めたリーダーであり、いつも物事を熟慮して行動し、レポートやスピーチの深い内容が印象深い生徒でした。生徒会最高学年をリードする立場に就き、満を持して取り組み始めた矢先にコロナ禍に直撃され、どんなに苦しく悩みの重なる日々であったことか。今回の答辞にはその全ての経験も糧にしての旅立ちの決意がこめられています。自分達を支えてくれた周囲の人達へ届けられた感謝の言葉も深く心に沁みました。式の直前には学年の仲間達と共に、お世話になった先生方に取材を行ってインタビューの内容を動画にまとめ、学年のみんなで共有してくれていました。
 ではその全文を掲載しますので、じっくりお読みいただきたいです。
 

答辞

 湘南らしい柔らかな潮風が春の訪れを感じさせる季節となりました。
 本日は私達卒業生のためにこのような素晴らしい式を挙行してくださり、ありがとうございます。また、ご多忙のなかご出席くださいました、ご来賓の皆様、先生方、関係者の皆様に卒業生一同心からお礼申し上げます。

 湘南学園での6年間は瞬く間に過ぎていきました。新しい友達と一緒に先輩の背中を追いかけるので精いっぱいだった中学1年。初めての後輩にドキドキした中学2年。中学最高学年として奔走した中学3年。翌年を見据えて全力で挑んだ高校1年。そして高校2年。それぞれが高い志をもってリーダー学年を迎えた、はずでした。
 それはいきなりの休校期間から始まりました。世界中の誰一人先が見えず、身動きが取れない日々。友達とおしゃべりしながら登校し、にぎやかに授業を受け、机を寄せ合ってお弁当を食べる。放課後は部活や委員会で忙しく過ごし、また明日ねと言って下校する。そんな当たり前だった「普通の学校生活」が突然途切れてしまったのです。生徒会活動はもちろんすべて白紙となり、ただ家に籠っているだけの高2の春でした。

 2か月後、学校はそれまでとは全く違った形で再開しました。何をするにもマイナスから始めなければならず、今までだったら当然のように立てていたスタート位置にすらたどり着けません。どんなに考えても、どんなに頑張っても、返ってくる答えは「だめ」ばかり。誰が悪いわけでもないからこそ、自分達の無力さに悔しくて涙した日もあります。いっそすべてを諦めた方が楽なのではないか、そう思わざるを得ない場面に何度も直面しました。
 しかし、私達にその選択肢はありませんでした。それは、先輩から受け継いだ想いや歴史、後輩に繋いでいかなければという使命感、そして何より、自分達の信念と意地、仲間の存在があったからです。正解を見つけたと思っても、あっという間にそれが不正解になってしまう。それなら不確かな正解にすがるのではなく、今が少しでも良くなる道をみんなで作っていこう。そう気持ちを切り替え進み始めました。支え合う仲間がいれば、倒れそうになっても、また立ち上がり、次の一歩を強く踏み出せたのです。

 後輩へ。大変な時期のリーダー学年が私達で、良い先輩としていられたかどうか、正直分かりません。でも、張りつめた空気を笑顔でほぐしてくれたみんなのおかげで、厳しい場面を乗りきれたことがたくさんありました。ありがとう。
 先生方。先生方は、私達を決して子供扱いせず、いつも真剣に向き合い、迷った時はそばで見守っていてくださいました。私達が道を決めると、そっと足元を照らす先生方の存在があったことで、いつでも安心して歩きだすことができました。6年間、ありがとうございました。
 両親へ。これまで、すべてに全力を注げたのは、どんなに朝早くてもお弁当を作り、どんなに遅い時間でも話を聞き受け止めてくれる母。悩んだ時、新しい視点でさりげなくアドバイスをくれる父。二人が私の絶対的な味方でいてくれたからです。ありがとう。
 
 そして同級生のみんな。今日、私達の湘南学園生としての生活が終わります。憂鬱だった試験も、面倒だった身なり検査も、さぼりたかった掃除も、長かった全校集会も、もうみんなと一緒にできないと思うと、全部愛おしく、感じます。
 いよいよ自分たちの時代、と張り切っていたのに、行事や部活動の延期・縮小・中止、まさか研修旅行までなくなるなんて思わなかったよね。そして、気持ちに区切りのつけられないまま、不安でいっぱいの受験勉強が始まって。

 かわいそうな学年と言われてしまえば、それまでかもしれない。最大限の頑張りも、周りからしたらただの悪あがきに見えたかもしれない。でも私達は、私達にしかできないことを全力でやり遂げたと思う。つらい時に黙って寄り添い、なんでも笑い話にして、折れそうな心を励まし合い、くだらないことで大騒ぎした。そんな時間を共に過ごしたみんなでの挑戦は、何よりも輝いていたはずです。
 これからは、正解のない明日をそれぞれが歩いていかなければなりません。不安で押しつぶされそうになり、立ちすくむ日もあるでしょう。でも、そんな時は思い出してください。同じ場所を目指す仲間となら、新たな道が作れることを。互いに信頼し、背中を預けられる仲間がいれば、また前を向き、進み続けられることを。
 この想いと6年間の感謝を胸に、私達は今日、湘南学園を卒業します。

令和4年3月5日
卒業生代表 瀧川理紗子

 
 次にご紹介するのは、学園小4年生のチャレンジです。昨年度の「海の学校」や今年度の「山の学校」を苦労して実現し、海のゴミ問題、山林や川も通じた水の循環、地球環境や資源の現状、食品ロスの現状と対策など、「体験を通して学ぶ」子ども達の総合学習は、相互の内容がつながりながら2年間で広がっていきました。
 理解を深めたSDGsについて「自分達も発信、提案していきたい!」という強い願いをどうサポートするか、学年の先生方は全力で向き合いました。動画作成や学年アートの制作など学外への発信活動を行い、市民イベントで名誉ある大賞を受賞しました。
 これまでの学習の集大成として選んだのが、市主催の『SDGsマルシェ』への参加でした。立ち寄られた市民の方々に学習成果をまとめたチラシの配布や多彩な作品の展示を通じて説明やプレゼンを行う。その一環として専門家のサポートも受けて楽曲を制作し、市民の前で歌やダンスも披露する、という素敵な企画でした。

 当日はスペースの制約を受けて各クラスから3名、学年9名が代表して現地で準備して活動を行い、学校に残った児童の皆さんとはZoomでつないで学年全体で共有する手立てがとられました。訪問した現地と教室をZoomで結んで学年全体で総合学習を行う方法は別の機会にも採用されていました。「新しい学び」のスタイルが進展している証がここにもありました。
 会場は駅前の一等地であり、多数の人びとが行き交う場所です。イベント開始後、地元放送局の取材放映なども入り、子ども達は活き活きと取り組み、岸田校長と中許学年主任を始め先生方の温かいサポートの様子や、学園生保護者など関係者が笑顔で見学される様子も素晴らしく、湘南学園小学校を広くアピールできる絶好の機会ともなりました。
 
 このような学園生の積極的なチャレンジの様子、これからの生活につながる頼もしい成長ぶりに接すると、気持ちが元気になり希望が広がります。
 世界はいま大変に危機的な情勢に直面しています。変化の激しい社会の未来像への不安も広がっています。次世代の子どもや若者に直接関わることができる学校の役割について改めて捉え直し、成長に寄与していく教育の取り組みが求められています。
 
 今年度も学園長通信をお読みいただきましてありがとうございました。春の気配が確実に広がり、桜の開花も楽しみになりました。感染予防対策を油断せずに励行しながらも、春の訪れを満喫できる機会を持ちたいものです。皆様それぞれにご家族や大事な方との憩いや団欒のお時間がとれますようにお祈りいたします。