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第105回 難民問題にとりくむ有志団体に学ぶ

2019年6月22日

 今回は、中高で先週に行われた、生徒間の貴重な同世代交流についてご紹介いたします。
 13日の放課後に、中高ホールで「難民問題から学ぶ、今僕たちができること」というテーマで行われた講演会・交流会についてです。
 
 東京都内の私立開成高校の「K-diffusionors」という有志団体を、学園中高生徒会の「学外活動推進分門」のメンバーがお招きし、中高生に広く呼びかけて本校で交流が行われる運びとなりました。

 相手校から5名のメンバーが遠路はるばる来てくれました。うち2名は高3生の先輩で、受験勉強で多忙な中を時間を割いてもらったのです。SNSで難民問題啓発のイベントを知って、「何もできないまま終わりたくない」と有志団体を昨年9月に学内で立ち上げ、実際に現地に赴くと決めた経緯が話されました。日本の高校生として初めて、アフリカ・ウガンダの難民キャンプ訪問を今年1月に実現したのです。現地到着までの行路の厳しさは想像以上で、よくぞそこまでしてと衝撃の報告でした。
 4月には都内でゲストを招いて、大きな規模の特別講演会を開催しました。交流会やワークショップも導入し、難民問題のリアルを同世代の人たちに知って考えてほしいと工夫しました。その実績も経ている今回の講演会は、学園生にとって本当にインパクトの強烈な、独自の学びの場となりました。
 

 現地での取材内容はドキュメンタリーに編集されていました。街やキャンプの様子、悲惨な体験をくぐって懸命に生きる同世代の声を丁寧に聴き取って紹介していました。隣国南スーダンとの関係、ウガンダの人達のおもてなしや日本人と似たメンタリティなど、鋭い観察がさすがでした。
 世界は実にいろいろな所でつながっているし、大きな社会問題も「自分ごと」として受けとめたい。全国の同世代の高校生の間にそんなネットワークを広げていきたい。それが自分達の役割ですという彼らの志が語り継がれました。
 さすが開成高生!と思える明快な雄弁ぶりに学園生も圧倒されたことでしょう。でも同世代の先輩たちへの親近感も広がりました。「拡散する者たち」という意味の団体名にこめられた願いを理解できた思いでした。
 

 今回の交流会には数十名の学園生と教員の参加者がありました。それも中1や中2の生徒達がいちばん多かったのです!生徒会総務のメンバーや中2の「チョコプロ」メンバーなどが周囲に声を掛け合い、SDGsをテーマに総合学習に取り組んできた高3諸君も含む中高生たちが数多く参集しました。

 さらに驚いたのは、中高ホールのあちこちから学園生の質問が次々と積極的に寄せられ、その流れが途切れなかったことです。
 現地での生々しい取材のこと、多忙なのになぜそこまで活動を進められるのか、「勉強する意味」をどう考えているか、勉学と活動をどう両立させているのかなど、次々と質問のマイクが廻りました。開成高のメンバーは一つひとつ丁寧に受けて、返答の言葉を紡いでくれました。

 「K-diffusionors」の新しいリーダーからは、「知る体験がテリトリーを広げる」として活動の意義が述べられ、グローバル社会で活躍したい自分の夢と結んで、進学の志望方向や英語学習の重要性が語られ、与えられた学校の勉強の課題に取り組む意義についてもふれてくれました。「知る」ことが「考える」ことや「行動」の起点であり、その輪を広げることが自分たちのミッションです、というメッセージが静かに、力強く私たちに伝わりました。

 彼らは、こんなにも大勢集まってくれた湘南学園生と発言内容の熱心さや、広く問題意識を共有している様子に感激しました、と話してくれました。
 

 学園を代表して、今回の担当リーダーの中村玲王君が謝辞の挨拶をしました。
 超進学校だからと距離感をもつ学園生もいると思うけど、自分たちも社会の現実に向き合って活動できるし、同世代の立場で他校生とも交流して視野を広げていけると確認できたこと。こうした社会問題に少しでも興味や関心を持つ仲間を学内でさらに広げ、学外での出会いや協力も大事にしながら、自分たちの行動範囲を広げていきたいこと。この日の全校朝礼における熱い呼びかけも受け、堂々と今回の交流会の意義をまとめてくれました。

 総務委員長の半田明穂さんは、新しい企画の実現のためにその主旨を広く社会にアピールし、募金協力を求めて粘り強くスポンサーを広げていった取り組みにも着目したことについてまずふれました。
 そして多忙になると様々な実務や懸案に追われるけど、大事なことは活動を開始した「理念」にいつも立ち返ること。何のために取り組んでいるのかの原点を忘れずに、委員長を目指して掲げた全校への願いを改めてかみしめながら進んでいきたいと語ってくれました。
 
 この講演会・交流会を通して「何かに取り組みたい」と感じてくれた生徒がいたら、総務委員に相談してぜひ一緒に自主活動を推進してくれたら嬉しいです、とのリーダー諸君の願いを聞きました。

 今回の特別講演会は、ここまでの生徒会活動の進展を受けて、「生徒たちがいろんな場面で主人公になって取り組み、みんなで力を合わせて成長できる学園」への希望と展望を大いに深める機会ともなる、画期的なイベントであったと感じられました。