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第106回 授業研究を推進する学園小学校

2019年6月26日

 私は中高教員の出身で、教科担当は社会科でした。中学では地理・歴史・公民の各分野の授業を、高校では世界史を主に諸科目の授業を受け持ちました。
 学園中高でも、教科ごとに研究授業を相互に見学する機会がありますが、全体としてそう多くはないといえるでしょう。

 学園小学校は、年間を通して全体での授業研究が推進されています。基軸教科の国語や算数、最近ではICT機器の活用など年度ごとに重点テーマが設けられ、研究授業を皆で参観した後、検討会がじっくりと行われます。「共同研究者」として大学等の専門家がコメンテーターとして同席される様子も恒例になっています。今回はその様子を少し紹介させていただきます。
 

 先週木曜日は、全学的な下校時刻の調整があり、6年生の算数の授業が対象となって実施されました。研究授業にはほぼ全員の先生方が集まられ、検討会は全体会と分散会を組んで進められました。私は検討会の一部しか同席できずに全体を見学できなかったですが、その密度の濃さに驚かされました。

 「平面図形」の単元でしたが、「学習指導案」は本当に入念な内容でした。図形と日常生活や人類の歩みとの関わりから入って、その視覚認知の特徴をふまえて児童が具体物を体験的に見て触れる指導の重要性が説明されています。 多角形を三角形がしきつめられた形として捉え、全体にある規制性に着目させたいとされ、学習をめぐる児童たちのこれまでの様子、ここまでの算数学習の軌跡と特徴、ICT活用の工夫やねらいが述べられ、児童が「思考のプロセスを見える化する」振り返りまで、「導入→展開→まとめ」の授業計画案が記されていました。教材や発問などの工夫も素晴らしく、連日多忙な中ここまで準備されているのだ!と敬服するばかりでした。

 見学した同僚や共同研究者からは、授業の経過や児童の活動に対する観察や気づきが自由に発言され、「子どもたちが主体として学べる豊かな学び」が追究されていました。同じ学習単元で6年生の他クラスですでに授業研究が行われた際は大学生たちも来園されていたとのことです。今回の授業研究の展開で学年会の先生方が議論を重ね、問題意識を共に深めながら進めていることを知りました。
 

 こうした校内研究会は低学年、中学年、高学年の児童を対象にそれぞれ進められます。さらに秋には恒例の「湘南学園小学校公開研究会」が実施されます。学外の関係者にまで広く告知され、専科の授業や英語の授業も対象に研究授業が公開されるのです。その熱心さに学ぶことが多いです。

 「本質を学ぶ授業」「本物に触れる授業」で知的好奇心や探究心を深めた学園生たちが、その先の中学~高校段階でも伸びやかに本物の学力を伸ばしてほしいとの願いまで根底にはあるのだな、と感じられました。