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第210回 新クラス名に託した先生方の願い

2021年4月14日

 桜の満開はとても早かった今年ですが、モッコウバラやツツジやチューリップなど春を彩る花々が次々と登場し、ぽかぽか暖かい日和に心浮き立つ季節となりました。

 本学園も新年度を迎えて、入学式・入園式そして始業式が続きました。新入生の皆さんをお迎えし、各学年の学園生と再会することができました。
 全国で臨時休校が延長された苦難の昨年度のことが思い出されます。対面で向き合って学園生活を共に出来る喜びをかみしめ、感染防止対策をひきつづき励行しながら、新年度のスケジュールを進めていきます。

 今回の通信では、学園小学校について、新年度開始の様子から特に心をひかれたシーンをご紹介したいと思います。
 
 学園小学校の「クラスの名前」は個性的です。各学年3クラスの体制ですが、今年度の1年生は「いちご組」「すもも組」「おれんじ組」でした。
 通常クラス名は2年続いて、3年生と5年生になったらまた新たなネーミングがなされます。学年スタッフの先生方が話し合って名付けるクラス名は独特です。そこには担任の深い思いがこめられます。
 
 7日の入学式は、素敵なピアノ演奏に沿って新入生ひとりずつ6年生のお兄さんお姉さんに手を引かれる入退場のシーンがまず印象的でした。
 新クラス名の果物が描かれた可愛いプラカードに先導され、6年生は入学を祝福する力強いコールを目の前の新入生に届けました。担任の紹介にひとりずつ応える返答は、元気で意欲いっぱいの様子でした。
 岸田校長先生の祝辞では、クラス名の由来についても紹介があり、翌日の小学校HPでは、連載の「校長日記」で<ようこそ1年生>と題する心温まる記事が載せられました。
  
 私もこのネーミングについて改めて興味を持ち、1年学年主任の小林先生にお話を伺いました。クラスの名前は、現在も学年ごとに生き物や食べ物、花や樹木、地名など多彩ですが、身近な題材で子ども達が親しめて、在学中も卒業後も誇りや懐かしさを感じる大事なものになれば、との願いに支えられているそうです。

 今回は本を読むことの楽しさや大切さを起点にしたいと願う中で、名作『はらぺこあおむし』(エリック・カール著、偕成社刊)が選ばれたそうです。世界的ロングセラーの絵本であり、ちっぽけなあおむしがいろいろな物を食べて大きくなり、つらい時も経て最後に虹色の美しい蝶になるという成長物語です。授業も遊びも行事も総合もすべてを大切な栄養として吸収し、ひとりひとりが個性豊かにたくましく成長して欲しいと願って命名したそうです。
 独自の仕掛けで絵本に登場する「いちご・すもも・おれんじ」はみな果物で親近感があり、しかも学校の3つのクラスカラー「赤・青・黄」にも合致して、まっすぐ子どもの心に届くはず、との先生方の期待がこめられました。新教室の装飾でも、各クラスカラーの花と紙テープが飾られ、黒板は春らしいイラストで彩られていました。
 
 学園小学校には、こうした独自の魅力的な学校文化がいろいろあります。

 式典や集会で司会なしにサッと一斉歌唱が始まるプログラムの感動、複数学年で掛け合う群読やコールの迫力、たてわり活動がさかんで6年生を筆頭に下級生をリードする頼もしい姿、毎日学校内で生活着に着替えておもいきり遊び活動するライフスタイルなど、中高出身の教員である自分にはとても新鮮なことでした。 
 一つひとつの学校行事や取り組みには、先輩の教員達から代々受け継がれてきた伝統があり、子ども達の手応えや成長への強い願いがこめられています。独自のクラス名の文化もその一環として大事にされています、との学年主任のお話に感銘を受けました。

 今回の入学式では、学園歌については前年度音楽委員による器楽演奏が行われました。いずれは皆で学園歌や大好きな歌をしっかり歌える日々も戻ってくるはずです。辛抱強く待ちながら、コロナ禍にまけずに健康と希望を守って生活していきたいと思います。