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第214回 鵠沼南部の変遷・貴重な写真展!

2021年5月19日

 湘南学園の最寄りの鵠沼海岸駅から、海側に徒歩数分で「鵠沼市民センター・公民館」があります。その1室に「鵠沼郷土資料展示室」が開設されたのは18年前のことです。
 市民の運営による独自の文化施設であり、いつも素晴らしい企画展が開催されています。
 今回は、現在開催中のイベント『写真に見る鵠沼南部の変遷』についてご紹介します。
 
 湘南学園の所在地である藤沢市の鵠沼南部は、明治期から計画的別荘地分譲と海水浴場が開かれ、関東大震災後の復興や小田急線の開通を機に、高級住宅地が形成された歴史を持っています。文学や映画など各界の文化人や政財界の著名人の方々が多数居住してきたことでも知られています。
 クロマツが主役の松林と砂地、門構えのある立派なお屋敷が続き、細い路地が行き交う景観はこの地域独特の魅力をもっています。でも近年は池や竹垣なども少なくなり、大邸宅の敷地が細分化されて分譲住宅が登場したり、地域の景観も変容してきました。

 今回の企画展は、この地域の街並みの変化を定点撮影した写真で紹介するというユニークなイベントです。鵠沼郷土資料展示室がこの企画展を主催され、調査の中心を担われたのは地元にご在住の建築家・前田忠厚さんです。

 地域の計823か所にまたがり撮影された中から6つのエリアを設定して写真を厳選し、1990年から2020年まで30年間、街並みが変容する様子を写真で対比してとらえるという手法がとられています。
 
 前田さんは建築学専攻でまち並み調査にも取り組んだ学生時代に、景観を記録する重要性を認識されました。2006年以後は鵠沼郷土資料展示室とタイアップして2010、2016、2020年と調査を行われました。鵠沼郷土資料展示室の内藤喜嗣先生を中心とした「別荘地鵠沼の歴史と変遷を紹介する企画展」と連携してこられたのです。

 内藤喜嗣先生は、以前にもこの通信でもご紹介したように、湘南学園のご卒業生でおられ、地域の歴史に誰よりも精通されている偉大な大先輩です。

 前田さんは、幼稚園から高校まで湘南学園にお通いでした。私が中高教員になりたての頃、担当した高校世界史の授業で出会い、理系に在籍でしたが世界史の成績も優秀で探究心の深さが印象的な生徒でした。
 住宅地として人気もあり街並みの変化が進む中、前田さんは「鵠沼の原風景」と変化を記録し、その資料から後世の人達にも歴史や文化を感じてもらいたいと考えたのです。
 「原風景を生かしたまちづくり」を考える視点から、逗子や葉山で取り組まれる方々とのネットワークにも参加されています。
 鵠沼の地で生まれ育ち、現在も自宅兼アトリエで建築事務所を営まれながら、地道な調査を続けてこられたのです。
 
 先日お二人のご案内に恵まれて、じっくり写真展を見学することができました。

 1990年から2020年まで30年間、景観が大きく変貌した地点が予想以上に多くて驚き、そういえば確かにそうだと納得し、同時に鵠沼地域の味わい深い「原風景」の魅力を再確認する思いになりました。大正から昭和期の写真も懐かしい風情にあふれ、「6つのエリア」を大きな地図でたどりながら写真群を見ると、各地区それぞれの個性も感じられました。

 写真展を通じて、閑静な住宅地が続くこの地域独特のたたずまいに改めて惹かれました。何よりも美しい写真の数々を見る中で、鵠沼の魅力を愉しむひとときが貴重なものに感じられました。
 
 この企画展は、この先8月15日までのロングランで、10~16時(月曜日は休館)に見学できます。学園生、保護者、教職員などの皆様に見学していただきたいです。来園の機会等でご都合をつけられ、写真展へもぜひお越しください。
 また鵠沼地域には学園卒業生の方々のお住まいも数多くあります。おおぜいの皆様にこの写真展をご覧になっていただきたいです。