第221回 80周年記念館前~「楷の木」の物語
先週後半を中心に続いた記録的な大雨によって、神奈川県内の広範な各地でも土砂崩れや河川の氾濫が起こり、避難指示や緊急安全確保が発令されました。
学園生とご家族の中でも被害に直面された方々が大勢おられることと思われます。謹んでお見舞いを申し上げます。
静岡県熱海市で起きた土石流の災害は恐るべき甚大な被害をもたらしました。犠牲者とご遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。現在も懸命の救命・救出活動が続けられており、行方不明の方々のご無事を祈念するばかりです。非常に困難な状況の中で作業にあたられる関係者の皆様の安全をお祈りいたします。
今回は、湘南学園の歴史に関わるご紹介をさせていただきます。湘南学園カフェテリアのある「創立80周年記念館」。入口付近には心地良くランチをとることができる「屋外ウッドデッキ」があります。そのウッドデッキの前に植えられている由緒ある一本の樹木についてご案内をします。
「楷の木」(カイノキ)という中国原産の木で、日本の書体「楷書」(カイショ)の語源と言われています。日本の歴史や文化に大きな影響を与えた儒学の祖、孔子ゆかりの有名な樹木であり、樹齢700年、高さ30mにも成長することもあるそうです。
世界遺産に登録された孔林(山東省曲阜)に孔子の弟子が植えて以後、中国では科挙の合格を祈願する「学問の木」と呼ばれるようになりました。
日本には約百年前に種子のまま渡来し、湯島聖堂や足利学校など日本を代表する各地の名所に植えられていきました。
湘南学園への植樹でお世話になったのは、「鵠沼を語る会」の方々です。
会員で湘南学園の元役員でもおられた、鈴木三男吉様(元日本評論社社長)が、「楷の木」を研究して出版され、鵠沼を語る会にも紹介されました。
学問の木と呼ばれる「楷の木」を鵠沼の地にも植樹して子供達を励ましたいと、中学校を対象に記念植樹を発議され、地元鵠沼中学校を始めとして藤沢市内の数校へ、各校記念の節目に寄贈されていきました。
そして2013年11月、鈴木会員様が種子から育てられた最後の一本である貴重な幼木が、湘南学園創立80周年記念の節目に、鵠沼地区6自治会からのご寄贈として植樹されたのです。
以上の歴史については、学園に植樹された「楷の木」の前にある碑文の説明と、「鵠沼を語る会」から頂戴した貴重な資料から引用させていただきました。
先日、会のメンバーの方々が大勢ご来園くださいました。市内各地に植樹された「楷の木」の成長ぶりを巡覧され、秋にご発行予定の会誌企画でまとめられるとのお話を伺いました。
地域と学園の歴史に精通されいつもご指導を戴いている鵠沼歴史資料展示室の内藤喜嗣先生と、いつも学園のためにご尽力戴いている湘南学園同窓会副会長の前川力様もお越しになられました、
創立80周年の植樹から8年弱の期間で、「楷の木」はすでに6メートルを越える背丈になっていました。驚くほどの生長ぶりに皆さんで感動を共有し、またカファテリアで懇談の時間を持つことができました。
ご来園された会の皆様は近隣にご在住で、湘南学園の卒業生や、学園の教育活動で大きなご支援を寄せられた方々もおられました。現在の学園について不十分ながらご説明をさせていただき、今後もご来園の機会をいただけるようお願いをいたしました。
この通信をお読みになられた方々には、今後ぜひご来園の機会に、この「楷の木」を、横に設けられた碑文とともにじっくりご覧いただけたらと願っています。