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第224回 建学の精神とSDGs&ESD

2021年9月8日
 個性豊かにして身体健全 気品高く 社会の進歩に貢献できる
 明朗有為な実力のある人間の育成

 
 これは私たち学園関係者が長い間継承してきた、湘南学園の「建学の精神」です。
 社会の大きな変化に直面する時こそ、建学の精神という根本的な指針に照らして、子どもたちの状況をとらえ直し、学園教育の進むべき方向について改めて深め直すことが重要です。
 
 地球環境と人類全体をとりまく情勢に対して、世界の人たちが危機感を深めています。
 異常気象と甚大な自然災害が日常化し、森林破壊や海洋汚染で無数の生き物が滅亡しています。コロナ禍に直撃された生命と生活は、この先も新たな感染症の不安に向き合うことでしょう。果てしない利潤競争と格差の拡大や、自国中心主義が強まって民主主義や国際協調が後退する傾向も顕著です。未来の社会を担う若者や子ども不安を深めていることでしょう。
 
 一方「SDGs」(持続可能な開発目標)は、現代を象徴するキーワードとなりました。人類をめぐる様々な危機は相互につながり、統一した解決の努力が求められることが理解されるようになりました。
 このままでは人類社会は存続できないとの危機感が共有され、世界全体が2030年までに実現すべき具体的な目標が明示され、地球上の「誰ひとり取り残さない」ことが誓われたのです。
 国連を中心に政府・自治体・企業・住民などあらゆる立場の人びとが自分事として関わることが要請されました。怒れる次世代の行動も広がっています。ビジネスの世界でも、今後の事業展開でSDGsは不可欠の留意事項となってきました。
 他方でもっと根底的に、世界の経済と社会を動かす「資本主義」の原理や仕組み、グローバル時代における動向を分析し直すべきであり、その克服を図る努力なしにはもはや人類は滅亡へ向かうのではないか、との強い課題提起まで注目を集めています。
 
 直近の2030年までに全人類が達成すべき「SDGs」の確実な推進をまず大事にした上で、更にその先も続くはずの<人類の未来社会>への希望や展望を広げるべく、「ESD」(持続可能な未来社会の担い手を育てる教育)を推進することも要請されています。
 湘南学園が、日本と世界をとりまく現状の中で、これまでの取り組みを大事に継承しながらもう一度建学の精神を熟考し、今後へ向けた教育実践を具体化していく上で、「ESD」の理念は未来へ向けた羅針盤になるものと考えています。
 
 幼小中高それぞれ学園生にとって、毎日の学園生活と経験が全て「学び」につながり、その学びのつながりや発展の中で充実した学園生活が築かれ、将来各自が幸せに生きていける力や人間性が育まれると捉えられます。どんな環境や社会におかれても、主体的に自分の人生を拓いていける力です。

 中高は、2013年からESDを推進する「ユネスコスクール」の国際的なネットワークに参加しています。中高6年間の発達の道筋を踏まえた「湘南学園ESDの指針ガイド」が作成され、各学年の重点的な指導目標が共有され、生徒たちは様々なプロジェクトにも挑戦しています。「ESD中学入試」も導入され、新たなカリキュラムに基づく教科横断の独自講座の開設に向けた検討も始められています。

 小学校では、教科の本質を踏まえた学び合いを深める授業研究や、身近な自然・地域との出会いからいつも「本物」と出会って探求的な学びを重ねる総合学習が旺盛に展開されています。「エコスクール」委員会が中心となり、保護者や地域ともつながりながら、児童たちが「学びの森」をビオトープにする活動や節電などのアクションに取り組み、「グリーンフラッグ」も取得しています。

 幼稚園では、あそびを通して周りと関わる力や自主性・創造性を育むチーム保育が展開され、「自分で考え行動できる園児」「自分の言葉で表現できる園児」が健やかに育っています。生き物の飼育や野菜の栽培、四季折々の年中行事の体験や食文化との出会いなどが豊かに展開され、「五感を駆使した」探求や学びが大事にされています。これらの体験は持続可能な未来社会の担い手としての豊かな人間的基盤を育むものです。
 
 これらの教育実践は全学的なつながりを持っており、そこを通ってきた学園生や卒業生の受けとめや評価が大事にされなければなりません。
 「湘南学園ESD」の教育の旗のもとで、全パートの先生方が連帯感を持って取り組みを進めることが、これからいっそう重要になっていくことでしょう。