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第229回 総合学習~主体的に取り組む児童達

2021年10月13日

 今回は、小学校4年生の「総合」の学びについて紹介します。

 先月末に、「SDGs特別講演」が行われた小学校ホールにおじゃまして見学しました。講演者の心からの言葉や、熱いレクチャーにしっかり集中し、一心不乱にメモをとったり、パワポの場面に感嘆の声をあげたり、つぶやいたりする様子が印象的でした。質疑応答にもどんどん挙手が続きます。別れを惜しんで講演者をとりまき、歓談する場面にも接しました。
 4年生の皆さんが、地球環境問題を「自分事」として受けとめる力が本当にすごいな!と感動しました。世の中の様々な事実を知り、自分達の生活を振り返り、身の周りからまず何が出来るだろうかと考えています。今後の「アクション」にもつながる関心や意欲が育まれているのです。
 
 学園小学校では3年生で「海の学校」、4年生で「山の学校」の宿泊行事を行い、年間を通した総合学習を進めます。3年生では身近な海の磯観察から多彩な生き物と出会い、海をめぐる現実や海に関わる仕事を知ります。4年生では「水」の循環と人間生活との関わりを調べ、地域の川の源流や河口を見学し、地下水の秘密など深い世界を探ります。
 大事にされているのは、五感を駆使した体験学習と、自分の興味から発する「表現」や「行動」への意欲です。昨年度3年生の皆さんは、SDGsの14『海の豊かさを守ろう』をテーマに海をめぐる学びを深めました。じっくり生き物に触れ合い観察して海の魅力を知り、「生き物たちが、地球が危ない!」と気づき、ビーチクリーンでは大量のゴミに接し、無数のカラフルなプラスチックの散乱に衝撃を受けました。
 そしてこの危機感を世界へ発信しようと発案し、「第1回リビエラSDGsフェス」に参加しました。自分達が理想とする未来の海を思い描き、クラスや学年の仲間と共に「動画」を制作しました。拾ったビーチグラスやプラごみも色別で仕分けして利用し、独自の「アート」も制作しました。そしてコンテストで「大賞」を受賞することができました!
 
 そして4年生になった今年度、SDGsの15『陸の豊かさも守ろう』がメインテーマになりました。川の様子や生き物、水の循環と地下水脈、水の浄化、海につながる川の源流について学んでいきます。宿泊先では富士山の樹海を実際に歩いて森の存在、湧水の冷たさや清澄さを体感し、マスつかみから自然の恵みを実感し、海につながる川や森の役割を学んできました。

 そして今回は、地球環境問題について総体的な理解と関心を広げてほしいと、若き環境活動家の露木しいなさんを、講演者として学園にお迎えしました。
 露木さんは現在大学を休学して、全国各地で中高生や小学生を対象に講演活動を続けておられます。年齢が近い自分の発信を通して、気候変動をめぐる事実に興味を持ち、自覚と行動につながるような提起ができれば、とのミッションから精力的に行動されています。
 高校3年間を「世界一エコな学校」といわれるバリ島のグリーンスクールで過ごし、気候変動をめぐる国際会議に参加しながら、肌の弱かった妹さんのために独自の化粧品ブランドを起業されました。
 写真や統計を判りやすくパワポで活用したレクチャーが秀逸でした。南極や熱帯雨林の変貌ぶり、マイクロプラゴミの拡散の実態、食材ロスをめぐる現状など、深刻な事実を切り口に、露木さんは子どもたちに次々と問いかけ、活発な質疑応答が続きました。

 どんな質問も尊重して語りかけるリードを受けて、子どもたちが気づいたりうなずいたり、熱心にメモしていく光景が頼もしいかぎりでした。今回の様子を「保護者の方々にも共有してもらいたい」との学年先生方の願いから、YouTube限定配信も準備されました。
 気候変動に対して誰が声をあげ、アクションを起こしているかにも留意された内容でしたが、子どもたちは日々の生活を振り返り、自分も未来の社会に関わりがあり、世の中の変化につながる生き方があるんだと気づいたことでしょう。
 このように学園生は幼小中高を通じて、世の中で広く活躍される方々から直接に学ぶ場面に恵まれています。多角的な総合学習を通して、五感や生活実感に根ざした興味や認識が広がり、その先の学びや行動に生かしていく意欲が養われていきます。
 
 もうひとつ印象的だったのは、4年生の皆さんが各自手づくりの「フラッグ」を持参して、講演会に臨む姿でした。
 「海の豊かさ」や「陸の豊かさ」への理解と願いを深めた子どもたちは、この旗に自分の思いを多彩に表現して各自持参していたのです。
 小学校舎に伺うといつも笑顔で挨拶してくれる元気な子どもたち。クラスと学年の強いスクラムが感じられます。ここまでの総合学習の成果を受けて、この先も小学校の高学年、そして中高生となった時に、新たな分野やプロジェクトに向き合い、仲間や先生とともに視野を広げ、チャレンジして達成感を広げてくれることを期待しています。