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第235回 湘南学園の食育実践にこめた願い

2021年11月24日

 人間は、毎日の食生活を通して生命と健康を守るように努めています。育ちざかりの子どもは特に日々の食事が大切です。家庭でも毎食のメニューや栄養の充実に心を配ります。
 そして「食べること」は人生の楽しみであり、好きな料理や美味しいご馳走に親しむ喜びや、家族や大事な人達との「共食」の時間は、生活の大きな支えになります。好きな食材を選んで購入したり、自分や他者のために調理する喜びもかけがえのないものです。
 さらに「食」を通して、世の中の様々なつながりを知ります。日本や異国の生産者や運送・販売に関わる人びとを知り、そのご苦労に感謝するとともに、十分な食事もとれない人びとや子ども達が世界には大勢いること、深刻な「飢餓」と膨大な「食材食品ロス」が共存する世界の格差の現実にも気づきます。持続可能な人類社会を築く上で、「食」の問題は誰もが考えたり取り組んでいける共通のテーマになるのです。
 
 湘南学園は総合学園として「食育」を重視します。今回はこのテーマについて述べてみます。
 食をめぐる現代社会の様々な困難が、地道な食育の取り組みを求めています。子どもや若者が「食に関する知識」と「食を選択する力」を豊かに身につけ、健全な食生活を営めるように育てていくこと。そのための第一の基盤は家庭ですが、学校にも家庭と連携しながら貢献する役割と可能性があります。大戦後に「給食事業」が全国に普及し、近年地域に根ざして温かい食事と暖かい居場所を用意する「子ども食堂」が、急速に各地に広がってきた経緯も想起されるでしょう。
 
 湘南学園のカフェテリアは、約8年前に開業されました。NPO法人の湘南食育ラボが、全学の学園生、関係者や来園者のために日々の出食、教育活動の支援や交流サポートを担当されています。カフェテリアは保護者や卒業生の憩いやコミュニティーの場でもあり、地域住民の方々や海外も含めた来園者との交流の場にもなりました。
 学園生や卒業生のお母様方と食育の理念に共鳴して参入されたラボの方々が、食材を吟味して独自メニューを考案し、お母様方の真心こもるランチをカフェテリアで出食し「ラボ弁当」を配食してくださいます。旬の食材や地産地消を重視した食材が豊富に用意されています。幼小中高を通じてクラスランチやスクールランチなど共食の機会では、食育に関する講話やレクチャーがなされています。
 
 中高家庭科の授業と湘南食育ラボが、今月以後にコラボで取り組んでいるプログラムからご紹介しましょう。
 中2の家庭科授業では「さんま」の授業が行われました(前回の通信でもご紹介)。ラボでは学園生のからだづくりを考えて、積極的に「お魚メニュー」の充実をはかっています。特に青魚などに多く含まれるDHAやEPAが生活習慣病の予防に役立ち、脳の機能を活性化する働きが指摘され、肉類に偏りやすい傾向もあることを考慮し、お魚メニューにも親しんで美味しさを感じて欲しいとの願いがあります。
 中3の家庭科では「郷土料理」の授業が進行中です。生徒達が夏休みの調査課題で全国各地の「郷土自慢の料理」を調べてレポートします。ラボの方では優れた作品から選んで実際のメニューとして採用してランチに提供してくださるのです!「鯨の竜田揚げ」や「鶏飯」など最近の採用メニューも多彩で、生徒諸君は期間内にどこかを選んで食べに行けます。日本全国各地で大事に継承されてきた彩り豊かな郷土料理を味わってもらうのです。

 高2の家庭科では「四群弁当」の授業が来月からです。栄養バランスを考えた献立を生徒達にも実際に考案してもらおうと、授業中にラボ栄養士の方から「四群弁当」メニュー作成のレクチャーをしてもらい、各班に分かれて実際に提案をまとめます。一位に評価されたメニューは実際のお弁当へと実現されて、各クラスの皆で食べてもらうのです。
 高3の家庭科では「世界の料理」の授業が進行中です。各国自慢の国民的メニューが解説され、最も希望の多かった料理がクラス毎にカフェテリアで提供されます。今年度はイタリア・ベトナム・スペイン・タイの人気メニューがラインアップされました。海外渡航の解禁後の将来には、各地の食生活にひきつづき興味を広げてもらいたいものです。
 
 食育関連の通信が毎月発行されています。幼稚園と小学校向けにラボから『パクパク通信』と『ラボらぶ通信』が、中高向けに食育推進委員会から『カフェテリアニュース』が届けられます。ランチやお弁当の献立と季節感あふれる食育の情報やメッセージが紹介され、メニューに関わる原材料や栄養価やアレルギー情報が記されています。

 また全国的な取り組みである「家庭料理検定」にも湘南学園は参加しています。食育推進委員会と家庭科の先生が窓口になって学園生や保護者が参加し、レベルが上がると「実技」の二次試験も待っています。先日も今年度第2回の家庭料理検定で、参加者の皆さんが5級・4級・3級を受験しました。
 
 このように、学園とラボは「学園生のための食について全学で取り組む」協働のパートナーです。「食育基本法」の理念も踏まえ、知育・徳育・体育と同様に食育を生活と人生を支える重要な基盤と考え、幼稚園から高等学校までの継続的な実践を通して、学園生の皆さんを大切に育んでいきたいと願っています。

 ラボの事業計画では、各学校・園と連携して「日本の伝統的な食文化や行事食について理解を深めてほしい」「からだと食べ物の関係について幼少時から知識を広げ啓発に努めたい」「生産者の方々や地域の取り組みを知り、感謝の気持ちとともに世の中への視野を広げてほしい」との目標を掲げられています。
 子ども達が正しい食習慣の基礎を築く上では家庭の役割が最も重要ですが、学園とラボも学園生の保護者の方々と連携して取り組んでいくことを重視しています。ラボの取り組みとして、幼小の保護者対象の食と栄養・健康に関する講演の機会やお弁当の試食会が設けられています。
 
 湘南食育ラボの「インスタグラム」にも注目していただきたいです。最新の取り組みが興味深く紹介されています。先日には、小学校2年生と6年生スクールランチと「れんこんの栄養」のお話(可愛いイラスト資料あり)や、幼稚園児達が芋掘りで収穫したお芋から調理された「さつまいも団子」の記事に出会いました。園児や児童に寄り添う食育の取り組みがうかがえます。ぜひご覧になってみてください。