A Random Image

ステンドグラス~もう一つの地球~

2023年7月6日

7月に入っても、梅雨空の毎日ですが、気温はかなり高めで、少し動くと汗ばむ陽気です。校庭からは、体育の時間の児童・生徒たちの声が聞こえてきます。3階の学園長室にいると子どもたちの声がはっきり聞こえてきます。「今だ!シュート!」「あーっ、惜しい」「さあ、もう一回いくよ!」・・・声を聞いているだけで、子どもたちの様子が見えるようです。
 
さて、私の目の前に「ステンドグラス」の作品が並んでいます。「虹の彼方へ」2018年川崎市教育委員会賞、「クリスマスツリー」、そして「もう一つの地球」2015年会友奨励賞、どれも色彩豊かで、既成概念を超えた造形作品です。「もう一つの地球」は、中に電球がセットされていて、灯りをともすと、カラフルに、そして暖かい光を届けてくれます。
 
このステンドグラスの作品は、卒業生の森陽子さん(1961年湘南学園高等学校卒)の作品です。森さんは、湘南学園高等学校を卒業後、文化学院美術油絵科を卒業、レザークラフトを手がけられていましたが、人生半ばにして、お母様の影響でステンドグラス制作を始められました。既存の型紙等はあまり使わず、独自の感性の独創的な作品が多く、ガラス工芸全般の技法にも挑戦されてきました。ユーモアあふれる個性的な作品は、人々を魅了し、数多くの公募展において連続受賞され、確かな評価を得られました。
 
この度、同窓会を通して森陽子さんのステンドグラス作品の中から3点を学園に寄贈していただきました。実は、森さんには、建学の精神のモニュメントをステンドグラスで制作していただく依頼をしていました。昨年、私が着任してからずっと気になっていたことが、建学の精神がどこにも掲示されていないことです。創立90周年を機に、建学の精神を何らかの形で見える化したいと思っていました。そんな話をしている時に、同窓会の会長、副会長からステンドグラス作家の森陽子さんのことを聞きました。「建学の精神がステンドグラスで作られていたら素敵じゃないか。全国にそんな学校はないよね。日本で唯一ステンドグラスで建学の精神が描かれている学校」そんな話に発展していきました。
 
私立学校は、建学の精神のもと、自由な教育を展開する学校です。建学の精神は大事にされ、みんなが実現を目指して意識しておくものです。言わばシンボルであり、理想であり、拠り所であり、忘れてはならないものです。大人も子どもも湘南学園に関わる全ての人の心の源でもあります。その建学の精神をステンドグラスで!という思いに賛同していただき、森さんに制作していただけることになっていました。しかし、その話を進めようとした直後、森さんが体調を崩され、製作していただくことは難しくなってしまいました。そこで、森さんの学園への思いを同窓会を通してお伝えいただき、この度の寄贈につながったのです。森さんの思いを実現するべく、作品の中でも湘南学園の未来への希望を思わせる「もう一つの地球」をモニュメントとして展示し、台座に建学の精神を刻む形を考えています。設置場所については検討中ですが、決まりましたらお知らせします。
 
また、他の2作品については、森さんからは幼稚園・小学校への展示を希望されています。こちらも展示場所が決まりましたらお知らせします。3作品とも、当分の間は学園長室にあります。学校にお越しの時、在室中は、ドアは空いていますのでご覧ください。
 
訃報:元学園長の川井陽一先生がご逝去され、6月末に葬儀が執り行われました。この場をお借りしてお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。次号で、川井陽一先生から学んだことについて書かせていただきます。