人の心の中に平和のとりでを築く
夏休み明け、授業が再開して一週間が経ちます。日中の暑さは相変わらず、猛暑日になることもありますが、朝夕は少し過ごしやすくなり、吹く風に心地よさも感じるようになりました。皆様、お元気でお過ごしでしょうか。
猛暑に豪雨、地震、そして迷走台風に悩まされた夏休みでした。毎年聞いてるフレーズですが、「今までで一番暑い夏でした」確かに、「冷房がないと寝られない」「日傘がないと歩けない」「30度と聞くと涼しいと感じる」「ついに40度を経験した」という声を聞きました。温暖化による気候変動は、私たちの生活を大きく変えてしまい、環境には悪いと分かっていてもたくさんの電気を使ってしまいます。ニュースを見ていますと、このような状況は日本だけでなく、世界中で起こっているようです。豪雨による洪水災害、干ばつによる砂漠化などを見ると、地球が悲鳴を上げていることが分かります。「地球の声を聴いていますか?」と質問された方がいらっしゃいましたが、それにどのように答えればいいのでしょう。今ならまだ間に合うと国連で決議されたSDGs(持続可能な開発目標)ですが、2030年までに少しは持続可能な社会に近づくでしょうか。
今年も、幼稚園から高等学校までの教職員と理事が参加して行う全学教研を8月28日に行いました。湘南学園にとって全学でユネスコスクールとしての活動を進めるために、ユネスコスクールの原点を知り、理解を深め、学び合いました。
10時、小学校ホールに集まり、開会・基調報告に続いてグループブレインストーミング「わたしにとって『平和』とは」「わたしたちの教育実践における『人の心に平和のとりでを築く』取り組みとは」ホール全体に広がってパートを超えて話し合いました。その後、全体で幼稚園からの実践レポートを聞き、グループに分かれて小学校と中高の実践レポートを聞き、質疑応答、グループワークを行いました。昼食休憩後、聖心女子大学の永田佳之先生から、レポート報告についてコメントをいただきました。その後、「平和教育」の実践について話し合い、付箋に書き、壁に貼られた模造紙(木)に根や茎、葉などの部分を書いた内容に応じてイメージして貼っていきました。その木を見ると、何を大事にしていきたいか、何に取り組んでいきたいかよく分かります。全体を通してのユネスコスクール湘南学園へのメッセージを永田先生から送っていただき、閉会となりました。
その時の様子を、コメンテータ-としてユネスコスクールの視点からご指導いただいた聖心女子大学の永田佳之先生が、ご自身のSNSを通じて湘南学園の教育について語ってくださいました。
「久しぶりの湘南学園。幼稚園から高校まで全学研修のテーマは「学園の目指す『平和』ってどんなん?」朝から半日かけてたっぷり議論を重ねて、フィナーレは学園の大木の誕生を皆で祝福しました。グループ討議の皆さんの姿勢を見て気づいたのは、この学園には半端ない傾聴力が先生方に身についているということ。本気で組織変容を起こすのであれば、まずは傾聴からなんだと思う。管理職が先生の声に、先生が生徒の声に耳を傾ける、そんな日常を丁寧につくることに尽きる。管理職や先生が他者の声に傾聴しない学校は生徒も同じ。湘南学園はその真逆。みんな誠実に、それも自然体で聞いているから、生き生きとした対話が生まれる。もっとすごいのは、人間だけじゃなく、自然や地球という他者の声にも傾聴する学びにもチャレンジしようとしていること。まさにユネスコスクールに相応しい実践になるんだと思います!聞かせる先生から聴く先生へ。そんな大切さを伝えてくれている湘南学園。来週、ユネスコ本部におじゃまするので、日本には culture of listening の素敵なユネスコスクールがあります、って伝えてみますヽ(^o^)
At Shonan-Gakuen, one of the long-standing progressive schools in Japan, I learned something valuable for all educators; that is, culture of listening! I found all the teachers there naturally listening to others. Culture of listening is embedded in the school life. What a wonderful foundation for schools to be sustainable!」
湘南学園がもつ魅力のベースには、対話の文化、傾聴する風土があり、持続してきたことを気付かせていただきました。そして、その文化はこれからも大事に持続させていく湘南学園の価値だと考えています。
湘南学園が加盟しているユネスコスクール(幼稚園・小学校は、正式加盟待ちのキャンディデート校)は、ユネスコの理念を実現する学校です。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関 United Nations Education, Scientific and Cultural Organization)は、教育、科学及び文化などの活動を通じて、世界平和を実現するために作られた国連の機関の一つです。ユネスコが作られた最大のきっかけは第二次世界大戦です。人類が二度と戦争を繰り返さないようにという願いが込められています。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」。これは、ユネスコ憲章前文の有名な言葉です。
今年は戦後79年、メディアでも8月に入ると戦争に関わる番組が連日のように放映されました。8月15日を境にパタッと見られなくなりましたが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」とならないようにしなければなりません。ユネスコスクールは、「平和の案内役」としての使命を自覚し、生きていく上で関わる様々な分野を通して、人の心に平和の砦を築き、世界の平和を実現していくために取組を進めていきたいと考えています。
また、ユネスコスクール(ESD推進拠点)は、環境も社会も経済も文化も、現在も、未来も、ずっと持続し豊かに暮らせるようにしたいと考えているのです。私たちの子どもや孫、地球の未来を奪ってしまわないように、私たち大人は自らの生活を見直し、自ら変容していかなければなりません。できることから取り組んでいきましょう。
ユネスコスクールとして、ESDを湘南地区へと拡げていく取り組みも始まります。湘南学園が100周年に向けて、さらなる発展をしていけるように、ご理解ご協力よろしくお願いします。