ユネスコスクールとして「いじめの予防」
~自己有用感が鍵 いじめについて正しく知り、考え、行動する持続可能な学校に~
「ユネスコスクールとしてESDを推進している学校なのに、いじめが蔓延しているようではいけませんね。」 これまで、ユネスコスクールやESDの研修会でよく聞いた言葉です。身近にある人権を守り、平和を築くことは、遠くにある戦争や災害等に思いを馳せることにもつながります。「think globally act locally」は、持続可能な社会創りに大事な考え方です。他人事にしている限りは、問題の解決はありません。
文部科学省は、10月31日付の「2023年度(令和5年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」において、小中高のいじめ認知件数、重大事態、小中および高校の不登校が過去最多になったことを公表。猶予なき事態を受け、同日に各都道府県・指定都市教育委員会や学校設置者に対し、調査結果を踏まえた対応の充実を求める通知を出した。 というニュースが流れました。
「人は生まれた時に愛情の器ができます。その愛情の器が一杯になってあふれなければ、人には優しくできないと言います。子どもの問題は100%愛情の問題なのです。」
「いじめは心のウイルス。子どもの心にあっという間に感染します。ウイルスにかかった子どもは自分では何もできません。善悪の判断が逆転する集団ヒステリーにもなります。だから、いじめは大人が解決しなければならないのです。」
『教室の悪魔~見えないいじめを解決するために~』『震える学校~不信地獄の「いじめ社会」を打ち破るために~』の著者でもある東京都児童相談センター児童心理士 山脇由貴子さんの講演でお聞きした言葉です。
典型的ないじめと言われる「無視・陰口・仲間外れ」は、今も昔も大きな変化はなく常に行われているようです。そして、心のウイルスが蔓延すると、被害者と加害者が入れ替わりいじめに巻き込まれていきます。中学校の場合、そのサイクルは6カ月で3分の1の被害経験者が加害経験者に入れ替わっているということです。(国立教育政策研究所資料より)
小学校高学年で「自己有用感」(他人の役に立ったという感情)を獲得できるよう、縦割り活動のリーダーとして世話をしていると、中学校に入学してからのいじめが減っていくと聞いたことがあります。いじめ、特に「暴力を伴わないいじめ」の予防は、「満たされている」「認められている」という思い『自己有用感』が大きな役割を果たしそうです。本人が「みんなから認めてもらっている」と感じられれば、愛情の器が満たされ、自ずから他人にも優しくなり、受け入れることができるのではないでしょうか。いじめの場合には、「満たされていない」という思いが、相手に対する意地悪な気持ちを生み出していると考えられます。
これまで日本人に欠けているのではないかと言われていた「自尊感情」や「自己肯定感」といった自分への感情ではなく、自分の行ったことを他人から認めてもらった、自分は相手の役に立ったというように、相手の存在があって生まれてくる「自己有用感」が鍵です。
かぜを予防するために、「うがい・手洗い」を徹底させたり、「早ね・早おき・朝ごはん」を促します。いじめの予防には、「規律・学力・自己有用感」となると思います。「自分で考える、話し合う、助け合う」を土台に、集中して授業に参加し、基礎的・基本的な学力を身に付け、認められている、人の役に立っているという実感をもった子どもなら、いじめに向かうことはないと考えます。そのために、学校はすべての子どもたちが輝く(活躍できる)場面を準備することが必要だと考えています。
一人ひとりが有用な持続可能な社会の創り手であり、認められない、いじめられていい人間は一人もいません。当たり前のことを全ての子どもたちが認識できる教育ができるよう、さらに建学の精神、各校の教育目標及びユネスコの理念の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。
「学校いじめ防止基本方針」を策定するよう「いじめ防止対策推進法案」で定められています。第15条には学校の責務、第9条には保護者の責務も示されています。保護者や学園関係者の皆様の御意見をうかがいながら、共に「いじめのない学校」にしていきたいと考えています。