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第36回 「学び直し」ブーム~生涯学習の楽しみ

2018年9月15日

 書店に並ぶ売れ筋の本の中に、学校時代の教科書が並ぶ光景に目をとめた方は多いことと思われます。自分は中高社会科の教員ゆえ、硬派の日本史や世界史の教科書がとても売れているのは驚きでした。今回はそうした動向をとりあげたいと思います。
 
 山川出版社の「もういちど読む」シリーズがブームの火付け役でした。その後の学説研究の成果や魅力的なコラムも書き加えられ、充実した内容です。他の諸科目にも広がってそれぞれ増刷を重ねました。大人向け教科書は他の出版社からも次々と発売されました。

 「小学校6年間・中学校3年間」の「算数~数学・英語」が「1冊でしっかりわかる」本といったコンセプトも読者をひきつけたようです。かつて学校で受けた授業を気楽に学び直すための書籍が実に好評なのです。
 

 もっとアクティブな学び直しも広がっています。年輩の人達は放送大学や近隣のカルチャー講座、インターネットの配信講座などをどんどん利用して興味ある分野を深めています。多忙なサラリーマンが就業前の時間を学習にあてる「朝活」や、ある本を囲んで語り合う「読書会」に参加するバイタリティには感心させられます。社会人の約9割が再教育に興味あり、との調査もあります。
 

 内閣府の「教育・生涯学習に関する世論調査」(平27実施)によると、社会人の学び直したい学習内容は、「外国語に関すること」「医療や福祉に関すること」「日本や世界の歴史・地理に関すること」が上位にありました。海外旅行などを機に「もっと知りたい」要求が高まる様子などがうかがえます。

 学校を出て社会人となった後に、大学や専門学校などで再び学んだ人と今後学んでみたい人を合わせると50%弱になったことも注目されました。「教養を深めるため」と「今後の人生を有意義に過ごすため」の理由が、仕事上の必要や転職を理由にする等よりはるかに多かったことも印象的です。
 

 人生の経験を重ねてこそ、改めて社会や学問や芸術などに興味や問いかけを持つのでしょう。自分に照らしてもうなずけることです。欧米各国のようにもっと大学再入学へのハードルを下げる様々な整備も必要なことでしょう。

 そして何よりも我々大人が学び続ける姿を、自分の子どもにも近くの子ども達にも示していくことが大切だと思われます。「勉強は楽しいことだよ!」と身を持って示していくことです。