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第47回 創立85周年・湘南学園の草創期

2018年10月24日

 湘南学園は、今年度で創立85周年を迎えます。創立記念日は11月15日であり、その節目が近づいています。今回は、湘南学園の歴史の中から、その草創期の歩みについて改めてお伝えしたいと思います。
 

 『湘南学園五十年の歩み』という大切な本を中心に紹介します。藤沢市鵠沼の地域は、東京からの通勤圏に入りながら相模湾に臨む景観にも恵まれ、戦後本格的に充実発展しました。そこには昭和の初期から、別荘地に加えて永住地として住まわれる方々が増加した背景もありました。

 その中で当時「よい医師とよい学校」を求める要望が高まり、「わが子を託せる」学校を創りたいとの動きが生まれました。
 

 鵠沼在住の有識者の藤江永正氏が、ご母堂の知り合いだった玉川学園園長の小原圀芳先生のご理解とご協力を得て尽力し、東京螺子工場の松本源三郎社長の別荘の二階家で4月に創立の産声をあげました。

 集まった児童は小学校入学児3名で、有志の方々が費用を出し合って第一校舎を7月に落成させ、机と椅子やピアノ等は小原先生が玉川から持参されました。初代の主事として託された伊藤孝一氏が創立当初の運営を担われました。「玉川分園」と「湘南学園小学校」の表札が共に掲げられていました。

 やがて学園の存在が地域に知られて転入生が増え、小学校児童8名、幼稚園園児20名となり、11月15日に安部政次郎氏が初代設立者となり、設置許可申請を行いました。戦後、宮下正美園長の時代にこの日が創立記念日と定められています。その後大戦の時代をはさんで、当時の関係者の先輩方は学事と経営で大変なご苦労を重ねられ、子ども達のための教育を追求されました。
 

 大戦後、本格的なPTA活動が開始され、学制改革を経て新制中学校、新制高等学校の設立が相次いで認可されました。湘南地方への有識者の人口流入が続き、明るく伸び伸びとした学園の校風は広く注目され、入学者が急激に増加しました。今日のような幼稚園、小学校、中学校、高等学校を併せ持つ総合学園としての湘南学園の基盤が築かれていきました。
 

 広く世界に目を向ければ、湘南学園の誕生した1933年は大変な時代でした。世界大恐慌の影響が広がり、深まる経済危機からヨーロッパではファシズムが台頭しました。日本は国際連盟を脱退し、軍国主義の風潮が浸透しつつありました。そうした時代に、藤沢市鵠沼の住民や有識者の方々が、子ども達の成長と幸福のためにより良い教育環境を設けたい、と学園が建学されたのです。

 そして日本が大戦の惨禍を経て戦後の再建へと向かう最も厳しい時代にも、懸命の努力で学園は守られ、その後の発展の土台が築かれていったのです。
 改めて敬意の念を深めるものです。