第50回 全国各地へ毎週「小さな旅」
毎週日曜日の朝8時から、視聴・録画するテレビ番組があります。NHK総合の『小さな旅』。30年以上の歴史を持つ紀行系の長寿番組です。
若い世代の人たちに推薦したい番組の1つで、今回はそのご紹介をします。
前回10月28日は、長野県の小布施町が舞台でした。信州の北東部にあり、「小布施栗(おぶせっくり)」は江戸時代に将軍家にも献上されたブランド名産です。古くから宿場町として栄え、当時の風情を残す建造物が多く、葛飾北斎もたびたび訪れたそうです。
栗農家が家族ぐるみで畑を守り、収穫時に落ちた栗をすぐに拾う重労働を近所のお手伝いも得て行う様子や、栗料理を囲む団らんの様子が映されました。
今回の主題は、小布施の「お庭御免」という習わしでした。通行人が民家の庭に自由に出入りできるという「おもてなし」です。
江戸時代に生活用水となる用水路が地域に張り巡らされましたが、水が来ない家は隣近所の家を通って水路を使わせてもらいました。その助け合いの中で「お庭御免」が定着し、新たに水道が整備された後も、約130件のお店や民家が通り抜けOKで、訪れる人たちに庭を開放しているのです。
ある年輩の女性は、わが家の庭を通る通行人にビールまで振る舞っていました。無料でおもてなしを受けて驚く人たち。隅々まで手入れの行き届いたお庭は素敵な憩いの場になっています。
庭でシャボン玉遊びをするお孫さんの菜央ちゃんが登場し、そこへ友だちの女の子もやってきます。三年前に東京から移り住み、両親は「人と触れ合う仕事がしたい」と移住を決め、築100年以上の蔵を借りてコーヒー豆の焙煎と販売をしています。
町の人たちに支えられて始めた暮らしの中で、凜ちゃんは前は引っ込み思案でしたが、友だちが増えてとても明るく元気になったそうです。菜央ちゃんが凜ちゃんの誕生日に、手作りの花束をピンクのリボンを添えて贈ります。
今回の番組ではカメラワークが抜群でした。子どもたちが生き生きと笑顔で家々のお庭を通り抜ける様子が印象的でした。子ども目線でカメラが追いかけ、緑あふれる地域で子ども達が交流する日常が、詩情豊かに映されるのです。
いま日本では「地方創生」が、今後の針路に関わるキーワードの1つとして認知されています。首都東京への一極集中を是正し、地方の過疎化・人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を引き上げること。誰もがその重要性を理解できるはずです。
全国各地のさまざまな地域の営みや、独自の魅力を広く知ることが、関連して大切ではないでしょうか。「ふるさと」を誇りに思う住民の人たちのなりわいやつながり、その土地ならではの風習や名所やごちそうなどにいつも目を向けたいと思います。
時間とお金に限界があり、直接現地に行ける機会になかなか恵まれないなか、テレビやネットの情報も貴重です。お勧めの番組やサイトを若い世代の人たちに紹介したいものです。この『小さな旅』もオーソドックスな編集ながら、日本の諸地域の美しさを伝えてくれる貴重な番組だと思われます。