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第80回 「子どもと接する時」への助言

2019年3月2日

 最近読んだ、子育ての本を紹介します。大書店に平積みされ、反響の大きさを示していました。とても平易な内容でしたが、親と教員にとって大事な指針が記され、大いに参考になると思われた単行本です。
 

 『子どもと接するときにほんとうに大切なこと』(キノブックス)。著者は田中博史氏、筑波大学附属小学校の副校長をお務めの先生です。
 これまで約三千人の小学生と関わって、個性も性格も様々な子ども達全員が純粋なエネルギーを持っていた。子どもと接する大人の役割は子どもが前向きに動こうとする姿をあとおしするのが基本、と説き始めます。その子どものがんばったところをしっかりつかんで、認めてほめることが大事と述べられます。

 この本の章立てを記してみます。

第1章 ほめるための材料を集める~ほめる・叱る
第2章 「自分から動きたくなる仕掛け」とは~仕組みをつくる
第3章 ほんとうに伝わる話し方&教え方~目線をそろえる
第4章 「できない」のでなく「体験不足」なだけ~子どもを見る
第5章 大人だって失敗してもいい!~見方を変える

 
 どんな時も、子どもの意欲や良心を信じ、尊重して関わることがまず大事だと、学校や家庭でのいろいろな出来事の受けとめ方、トラブル発生時の対応の姿勢が記されます。

 「子どもの出来ていることを発見する」という視点に共感しながら読み進めます。「親や教員がきちんと見ていてほめてくれる」と子どもが実感することが大切だと。そうだなと共感します。第三者を介してほめることや、「ほめ言葉のチームプレイ」などは著者らしい提起です。

 「動きたくなるエネルギー」を育てるために、「思考力を育てるためにあえて子どもが困る場面を用意してみる」、「子どもの考える余地を残しておく」といった視点は大いに参考になるでしょう。日常生活の中に、考える力を育てる機会はたくさんあるとの指摘です。注意や指示が感情的になるのを抑えて、「そうした方がいいかな」と子どもが思えるストーリーを交えて伝える工夫も示されます。

 子どもに接している大人が決めつけて固定観念をもつと、子どもの本当の姿が目に入らなくなる危惧が述べられます。子どもを「点」でなく「面」で見る構え、「一歩引いて見る」メリットが説明されます。時には大人が子どもを頼ってみることも重要です。子ども達の本当のすごさを引き出せた、教員としての体験の話は感動的なドラマでした。
 

 大人も失敗するのを見て子どもは気軽にチャレンジできること。・・・・・・このあたりからいちばん共感するところが続いて、読んで良かった!と思われました。この先はもうふれないでおきたいと思います。親も教員も経験を重ねてこそ、予期せぬ事態への対応力もだんだん身についていくのだと実感しました。
 田中先生のメッセージは普遍的で実践的で、いろいろ参考になります。すぐに読める本なので、多くの方々にぜひ購読をとお勧めしたいです。