A Random Image

第84回 便利なSNSと生活のバランス

2019年3月16日

 現代の社会において、SNSの利用は、急速なスピードで浸透しています。
 今回は、SNSが持つ「便利さとリスク」について、子どもたちや若者たちをめぐる状況についてふれたいと思います。
 

 日本でも世界でも、インターネットとSNSの普及が社会に与える影響力は圧倒的なものです。たとえば大都会と僻地をも容易につないでビジネスや社会活動に生かせるツールになりました。これからも社会の新たな発展にしなやかに貢献できる可能性が期待されています。直接に会って話さなくても、はるかに多数の、海外の遠方の人びととも情報を共有して交友関係を広げられるのは、SNSの抗しがたい魅力といえるでしょう。
 

 一方でSNSをめぐるトラブルや事件、使用者の疲労や不安の問題がクローズアップされています。学校現場では、SNSが子ども達の人間関係のトラブルの原因になるケースが急増して、重大な関心事となっています。その対応や啓発は切実な課題です。SNSの利便よりも苦労が大きくなり、離脱の希望をもつ大人や子どもまで増えている現状があります。

 最近、「バイトテロ」の報道が続出して世間の注目を集めました。撮影した写真や動画を誰もが気軽に発信できる時代ゆえに、投稿者のモラルが大人にも若者にも鋭く問われているのです。家庭でもスマホ等の使用について、親子間の話し合いや約束・ルールづくりを図ることが大切になっています。

 特にラインの浸透は、中高生や小学生の生活に大きな影響を与えました。
 大小のグループの形成が仲間意識を広げる一方、入る・入らないの差が生徒のストレスや不安につながり、思わぬトラブルが頻発しやすいことが心配されています。そうでなくても多数の相手の反応に一喜一憂し、いつもスマホを開かないと落ち着けない、せわしい生活に疲れてしまう傾向があります。「女子中高生の半数がSNS疲れ」という意識調査の記事にも接しました。

 感情や情緒が安定しない人が、特定の相手を頼って執拗にラインやメールを送り続けることもあります。深夜まで続いてお互いの疲れが翌日まで持ち越されるのは悲惨です。SNSの種類が多様化し、中傷や攻撃が生徒や教員や学外をまきこむ事例もあります。SNSの初心者は言葉の選択や見知らぬ人とのリスクに鈍感であり、不注意のリスクを教示してくれる人に恵まれずに、いきなり深刻なトラブルに直面してしまう事例も後を絶ちません。ピンチに直面したら抱えこまずに誰かにSOSを発して救済を求める必要があります。
 

 SNSと程良い距離をキープし、時間とルールを意識して、自分の生活全体のバランスを守ることは、大人にも子どもにも切実な課題になっています。
 SNSは、あくまで直接の人間関係を補完するツールのはずであり、適度な位置に収めて活用するのが筋であるといえるでしょう。

 特に子ども達にとってSNSは、旬の話題や楽しいことを共有できる場であり、仲間意識を確認できる居場所でもあります。気遣いを重ねて神経過敏になるケースも少なくないですが、バッサリとやめるのは難しいのです。
 その気持ちを踏まえない強制的な対応はなるべく避けて、本人が納得できる助言を行う必要があります。「このままではいけない、変えたいけど難しい」と苦しむ状況を聴き取り、克服へ向けた自覚を引き出せるようなサポートが求められます。

 どの世代にとっても、新しい人との出会いが基本です。直接に向き合って対話をする楽しさや、声をかけ合って共に行動する手応えをいっぱい体験することが根本的には大事でしょう。その上でSNSのフォローも適切な範囲で大きな貢献をはたすことでしょう。