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第94回 あふれる選択肢とライフスタイル

2019年5月15日

 たとえば受験生が書店で参考書や問題集を選ぶとき、あまりに種類が多くて選ぶのに困ってしまう経験があることでしょう。口コミや誰かの推薦が頼りになることもよくあります。見知らぬ街で食事や買い物をするとき、あまりにお店が数多くて戸惑い、ネット情報の評価や馴染みあるチェーン店を頼りにすることもしばしばです。

 現代は新しい商品やビジネスが次々と開発され、膨大な関連情報に囲まれて暮らしている時代です。その中で各自が「自分らしいライフスタイル」を模索して選んでいくべき時代でもあります。今日はそんなテーマについて述べてみたいと思います。
 

 ある新聞記事で「ジャムの法則」という言葉に接しました。「選択肢が多い時は少ない時より判断を下しづらくなる」傾向について、米国の学者が実験によって提唱したものです。
 高級スーパーで24種類のジャムと6種類のジャムを並べてそれぞれの売り上げを比較したら、最終的にジャムを購入した人は、お客の多かった前者が試食者の3%で、後者は30%であったそうです。10倍もの開きです。

 これは「選択肢があまりに多いと逆に選択ができなくなる」人間の戸惑いを表現する例と受け止められます。もちろん対象となる商品ジャンルとか購入者の嗜好や傾向などいろんな要素があり、一概に断定できない部分もありますが、何となく納得できる指摘であると思われました。
 自分もその傾向は強いと思われます。メニューの多過ぎるお店に入ると困って面倒になり、お店の人に「イチオシ」を尋ねたり、行きつけのお店が出来ると選ぶのをやめて「いつものあれにする」と固定したりもします、小売業ならどこでも「常連さん」を数多く得られるかどうかは営業の土台になります。親子で何十年も通い続けるようなお店は顧客の大切な居場所の1つになります。
 

 日本の小売・流通業界の大リーダーである鈴木敏文氏(86歳)の「平成経済を語るインタビュー」記事に注目しました(3.17朝日)。スーパー・百貨店・コンビニ・ネット通販をめぐる業界の推移を鋭く分析された記事でしたが、「私は店舗型の将来を悲観的に考えていません。(ネット時代の限界にふれて)品揃えと価格が売りのネット販売が広がると、今度はより質を求める流れが出てくるはずです。人と人との触れ合いを求める消費者も出てきます。必ず隙が出てきます。~(社名)をおそれる必要はありません。」と述べておられました。
 

 ネット通販は自分も時々利用します。その便利さには圧倒される思いになります。同時に自分は会話を大事にするライフスタイルが好きです。美味しい出会いがあればお店の人に感謝の気持ちを伝えます。全部でなくても馴染みの店での対面購入をなるべく維持したいです。皆さんがはつらつと声を出して笑顔で接客される様子から学ぶことも多いです。裏方の方々が手分けして仕事を急ぐ姿も心に残ります。垣間見るのはほんの一部ですが気をつけてみるようにします。

 もちろん消費者としての選択は各自の勝手であり、そのライフスタイルは多様であるのは当然のことです。ただ若者達には、私たちの生活を支える様々な商品やサービスを提供して下さる社会の人びとに、意識的に目を向けてほしいし、いろいろ学ぶ姿勢を持ってほしいものです。そんなアンテナを持って世の中を見廻してみて、小さな交流の機会を重ねてもらえたらと思います。