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第98回 就職をめぐる社会情勢の変化

2019年5月29日

 学生時代に続く就職が決まって、報告に来てくれる卒業生と話すことがあります。人生の大きな節目を迎え、次のライフステージへ向けて期待や不安に向き合うなか、「幸多かれ」と願い、健康維持と活躍を祈るばかりです。

 就職をめぐる新たな時流の様子が見えてきた昨今、本日はそうしたテーマにふれたいと思います。
 

 自分の学生時代、「新卒一括採用」はたしかな主流でした。大学の取得すべき単位を早めに得て卒論など課題をしぼり、在学中に選んだ就職先を確保すべく「就活」に集中しました。しかし時代は変わり、企業の新卒一括採用は抑えられて、転職者や中途採用の割合を増やす傾向が明確になってきたのです。

 経団連と大学が4月に共同で公表した提言では、「複線的で多様な採用形態に秩序をもって移行すべき」と記されました。不安を持ってニュースに接した若者は少なくなかったことでしょう。
 従来の採用試験や面接の解禁ルールは当面維持されながら、期間を決めずに選考するいわゆる「通年採用」を行う企業も各界で増加しているようです。
 

 大企業の採用でも、新卒が約6割、中途が約4割という統計結果もあることは我々の世代には驚きです。新卒が抑えられる分、再就職のチャンスが広がり、転職サイトや転職フェアなどが活発になったことにも気づきます。

 そして一方、苦労して就職先を決めても、「大卒なら3人なら1人が3年以内に退職している」現実があります。有名な大企業でもあり得ることだし、離職率の高い業界では、そうした現実を前提に新卒一括採用で多めの人数を採用する傾向があることも知られています。
 

 私自身もそうした離職経験があり、他の業界から教職に転向しました。その分、新たな仕事で息長く努力しようとの静かな決意は持てていたようです。

 どんな分野に就職しても「見習い時代の苦労」を我慢し、どんな仕事にも意味があるんだと粘り強く取り組むべきだと多くの識者が助言します。仕事観が深まって仕事力も知らず知らず身につき、地味な体験を糧にして次のステップにも進めるというのです。
 

 「あの会社(事業所)に入りたい」といった素朴な願望はたしかに大切な原動力です。同時に「新卒~終身雇用」、「ストレーター」という従来の枠組みが揺らぐなかで、自分の個性や持ち味にふさわしい仕事のあり方を広くイメージし、広い選択肢から進路を選びとること。その後に変更があってもそこまでのキャリアを統合して生かせるように働いていくこと。次世代の若者たちの柔軟な進路選択を応援したいと思います。