A Random Image

第116回 『みんなの学校』木村泰子先生に学ぶ

2019年9月11日

 前回の続きになります。先月末に行われた「第9回全学教研」について、まず午前の部の様子を紹介いたします。

 今年度は、関西から、木村泰子先生を講師としてお迎えしました。
 大阪府で新設の公立小学校の校長時代に取り組んだ教育づくり・学校づくりの記録映画『みんなの学校』の上映会が全国に広がり、ご退任後は文字通り全国各地の講演会や研修会に招待され、活躍されている教育者の方です。

 木村先生の講演や著作は、全国の人たちに、混迷する時代を切り拓く確固とした教育の指針や希望を届けておられます。
 すべての子どもが学びの主体として自分らしく育つことを保障され、教職員と保護者とともに学校をつくる主人公として成長する。その道筋はシンプルで感動的なものであり、どんな学校でもチャレンジしていけるものであると理解や意欲を深めることができました。
 

 学園長挨拶と実行委員長挨拶~担当は前回に続いて中高の山田美奈都先生~に続いて、ドキュメンタリー映画『みんなの学校』のショートバージョンが上映され、次いで木村先生の講演が行われました。

 舞台となった「大空小学校」。年間を通して様々な場面で子どもたちが学び、悩みながら、力を合わせて取り組む姿が活写されます。いつも子どもに寄り添い、同僚としてカバーし合い、保護者や地域住民とスクラムを組む教員たちの姿に親近感を覚えます。

 大空小学校では、子どもたちに育てたい4つの力として、「人を大切にする力」「自分の考えを持つ力」「自分を表現する力」「チャレンジする力」を掲げ、保護者や地域の人も協働していきます。そして子どもたちにも守るべきたった一つの約束があり、それは「自分がされていやなことは、人にしない、言わない」ということです。
 

 「問題児」として送られた子どもの様子と、表情の変化や成長ぶりに驚きます。子どもたちがあらゆる場面で主役になって「みんなの学校」が築かれる様子は、教育行政に携わる方々にも反響を広げました。

 教員は子どもたち全員を担当し、緩やかに分担や協力をして最善の関わりや支援を探ります。大人も失敗したらやり直すんだと見ることができて、子どもは安心してチャレンジできるのです。
 

 木村先生から、映画に出てきた子どもたちの卒業後の軌跡も紹介されました。

 どんなに困難な子どもでも固定概念で割り振りをせず、その子の事実だけに集中して粘り強く関わる。トラブルがあっても大人が審判をして説教するのでなく、子どもたちが主体的にやり直しが出来るようにサポートすることが肝心。こうした指摘も心に残りました。

 「見えない学力」を育てることに集中しながら、「見える学力」もちゃんと育った結果や、自己肯定感が著しく高い傾向がなぜ築かれたのかといったお話は、今後の大切な課題になりました。
 

 木村先生は、前日まで九州で講演会を担当され、豪雨の影響で空輸が遅れる中を湘南学園のためにお越しいただきました。夏休み中もご予定はびっしり立て込まれていました。その中でお渡しした幼・小・中高の各学校案内まで丁寧にお目を通され、講演の中では次のように総合学園の課題を示唆されました。

 15年間もの長きにわたって子どもの成長に寄り添いサポートできる環境はかけがえのないものです。建学の精神をふまえて改めて「最上位の目的」をパートの違いを越えて教員が共有することが大切でしょう。

 それに沿って無駄なことは思い切ってやめ、教員本位でなく子ども本位で従来の業務を見直し、幼小中高それぞれ、すべての教育場面で、未来に生きる力を育てようと子どもに向き合えば、子どもたちが自信を持って取り組み、きっと更に劇的に成長していけることでしょう。

 学園全体の仲間として失敗を恐れずに連携や協力を深められれば、新たな素晴らしい「みんなの学校」を築けるものと信じています。
 

 参加者の先生方は、温かくて説得力あふれる講演に圧倒される様子で聴き入っていました。内海理事長や岩武副理事長、淡路顧問も中高ホールに同席して下さいました。広く皆さんで貴重な時間を共有できて本当に良かったと思われました。