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第119回 非認知能力を伸ばす学園の幼児教育

2019年9月21日

 社会の変化が激しい現代において、新たな困難や予想できない事態にも対応して生きぬいていける力が、子どもにも大人にも求められています。
 「非認知能力」という言葉が関連してよく使われるようになりました。今回はこのテーマについて、学園教育の願いにもふれながら述べたいと思います。
 
 これまでの社会では、各種の試験やIQテストなど、計測可能な得点や成果が「認知能力」とされてきました。偏差値などの数値が重視されて一人歩きし、「頭が良い」「学力が高い」ことが注目を集めるような流れがありました。

 しかし、多様で複雑な社会の中で生きていくために数値化できない能力が、これからの社会では相当に重要になることが、多くの人たちに合意されてきています。

 くだいて例示すれば、「目標に向かって粘り強く続ける力」、「課題を発見して解決する力」、「相手の気持ちを理解して協働できる力」、「感情をコントロールして回復できる力」といった人間としての総合力です。

 「コミュ力(コミュニケーション力)」という言葉も流行しています。計測できる学力がいくら高くても、新たな環境で周りの人たちと折り合いをつけられずに挫ける例は少なくありません。たとえば就職選考における面接でも、そうした「非認知能力」の様子が採用にあたってより重視されるようになってきているのです。
 
 こうした非認知能力は、幼い頃からの各家庭の環境や幼児教育の環境の中でまず育まれていきます。「いつも受け身の生活」でなく、「子どもが自分の意志で決めて行動し、その子らしい個性を伸ばしていける生活」が大切なはずです。

 湘南学園の幼稚園では、特に「あそび」の中にこそ、そのポイントがあると位置づけて保育に取り組んでいます。

 大人が遊び方をあれこれ指示するのでなく、自分で&自分達でより楽しく遊ぶために考えて工夫し、試行錯誤することを大事にしています。子どもの様々なトライや「気づき」をすくい取って励まし、サポートするのです。「子どもはあそびの天才」という金言があります。子どもはいろんな物を遊びに生かし想像の世界をふくらませます。考えてみれば、大人もまず自分の子ども時代を振り返ることが大事でしょう。
 
 一例として、幼稚園の研修会のレジュメに「園庭に砂場がある教育的な意義」についての資料がありました。子どもたちが自由に「砂遊び」を展開する中で感性や協力を広げる様子が理解されました。

 遊び道具や季節の作品も、既製品に頼り過ぎずに、保育者や親御さんと一緒に手作りする機会がたくさん用意されています。遊び方や楽しみ方もまず子どもに考えさせることが徹底されています。動物との触れ合いや自然に親しむ行事を大切にして、生活の楽しみを増やし、探求心を伸ばしていく保育が追究されています。

 お稽古事が忙しかったり、室内ゲームやスマホが浸透していく風潮が世間にあるなか、子ども時代に外で思いきり遊ぶ時間と体験を確保することもとても大事であり、学園の幼稚園教育はそうした教育観を根底にすえて進められています。