A Random Image

第120回 お手伝いの大切さ~日々の親子関係

2019年9月25日

 親子二人で暮らす時代が長かった自分には、家で母親のお手伝いが少なかったという反省があります。母が外の仕事と家事で忙しいのに、買い物だけは好んで担当したものの、あとは片付けや修理とか年末の掃除などに限られ、洗濯など家のことはほぼお任せでした。炊事に進んで加わることも少なかったです。

 ですから偉そうなことはいえませんが、教員になって「お手伝い」の大切さを改めて理解し、生徒のお母様にも助言する機会がふえました。今回はこのテーマにふれてみたいと思います。
 
 毎日の起床から始まり、生活全般で「親が世話して面倒を見るのが当たり前」の風潮が根強いように思えます。子どもは何でもやってもらうのが当然になり、感謝の気持ちも弱いまま、何か少しでも快適でないと親に文句をいうのです。

 親から見れば、掃除や整理、配膳や食器洗いなど、子どもに任せると後のフォローが大変だし、勉強や受験、塾通いや習い事などで忙しいから専念できるよう、周りのことは何でも先にカバーしてしまう流れになりやすいものです。

 でも子どもは、家庭の中で何らかの役割を持って動いて、家族に認めてもらい喜んでほしい、という潜在的な気持ちを持っていることに注目すべきではないでしょうか。「ちゃんと買い物してくれたね」「洗濯物をきちんとたたんでくれたね」など、親として「嬉しい」「助かる」気持ちを伝えられることになります。そのことが大切だと思われます。

 だから出来そうなことは積極的に頼んで、後でありがとうといえるリズムを定着させたいものです。子どもは親に感謝され、役に立ったと達成感を持てる。その積み重ねが親子関係に良い影響を育みます。「お手伝い」の第一の意義はそこにあると思われます。
 
 そしてお手伝いの作業一つとってみても、子どもにとっては身体や頭を動かし、物に触って取り扱い、イメージを描いて工夫していく経験といえます。

 複数のお店をまわったり、テーブルに多数のお皿をどうひろげ、あとでどう片づけるか、どんな場面でも作業の段取りを考える場面になります。

 毎日繰り返して受け持つことで、自分の担当だからと責任感も持てるし、ちょっとした「エキスパート」にもなります。「この仕事は全部任せられるね、すごく安心だよ」と伝えてあげられます。何でも「お客さん」になるよりもずっと良いことです。
 
 お家でのお手伝いから始まり、学校でも様々な場面で役割を持って工夫して取り組みます。誰かのために役立つ手応えを重ねていくことは、地味なことですが、社会の中で人間関係を広げて生きていく土台になることでしょう。

 幼稚園児も小学生も中高生も、まずご家庭で、家族のための子どもの出番をふやして、声を掛け合う機会を増やしたいものです。