第184回 同時代の現実を伝える番組紹介
スマホやパソコンを用いてネット情報が無限に入手できる時代になりましたが、テレビはいぜん重要な情報源です。
毎日の生活で、台風関係の最新情報とかコロナ禍をめぐる重要報道など、いち早くテレビの大きな画面でわかりやすく確認できる利便は替え難いものでしょう。
テレビの視聴はネット視聴のような「キーワードの入力」も不要です。リモコン1つでチャンネルを変え、そのまま身を任せれば長時間くつろぐこともできます。
でも限られた時間はもったいないし、テレビとのつき合い方も工夫することが可能です。膨大なテレビ番組の中には貴重な情報が豊かにあります。番組制作者の苦労や熱意に敬意を払って視聴し、時には録画保存して家族や友人にシェアしてもらうこともできます。
私が良く観るのはドキュメンタリー番組です。放送時に不在だったり、深夜や早朝にひっそり放映される心配もあり、録画予約して後で観るのが通例になりました。
今回お薦めするのは、『目撃!にっぽん』という番組です。NHK総合で毎週日曜日の朝6時10分~45分の時間帯に放送されます。全国各地のさまざまな現実を、地方放送局が丁寧に取材し、深い共感をこめて制作しています。全国各地の取材発掘を大事にしてきたNHKの長い伝統が感じられる、優れた報道番組です。
ここ数か月の放送では、コロナ危機の深刻な打撃の様子と、生活の糧を求めて懸命に働く人たちの姿が数多く取り上げられました。
売り上げ激減で多数の解雇を迫られた観光バス会社や、3密前提のため営業困難に追い込まれた大都会の小さな飲み屋街の人たち。ステイホームで需要が高まったフードデリバリーに参入して競い合う配達員の人たち。数か月も寄り添い続け、登場した方々が苦悩の日々を耐えて希望を見出す姿を伝えていました。
コロナ危機で行き場を失った人が急増する中、札幌の自立支援施設の奮闘を伝えたのはごく最近の回です。ホームレスの人たちだけでなくサラリーマンや派遣社員の人たちも入居者が増え、懸命の支援に市民の協力も広がりました。以前の回では、元ニートの人たちを派遣社員に迎え、コロナ危機で相次ぐ「派遣切り」にあっても彼らを守り抜こうと苦闘する熱血社長の姿が心に残りました。
番組の公式サイトでは、「自分とは関係ないと思っていた知らない現場、知らない思い。そこで懸命に生きる人の姿を通じて、“遠い問題”が身近に感じられるようになったり、“知らない人”を想う心が少し豊かになる・・・。『目撃!にっぽん』はそんな番組を目指しています。」と記されています。
同時代の現実を広い角度から知る上で、優れたドキュメンタリー番組は重要な情報だと思われます。同じ社会の中にはこんな人生があり、つながりがあるんだ、と広い世間に目を向けられます。改めて自分の生活が広く支えられていることに気づき、今後の生き方を考えるきっかけにもなることでしょう。
ご家族で共有できる機会の1つとして、こうした録画視聴も手軽にできる方法ではないか、とお薦めしたいです。