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第193回 長谷川路可展 ぜひ鵠沼公民館へ!

2020年11月11日

 湘南学園の最寄り駅である小田急江ノ島線・鵠沼海岸駅。そこから学園側とは反対の海側へ進むと、すぐに駅前商店街を通り、閑静な住宅街に入ります。数分も歩くと「鵠沼市民センター・公民館」に出会います。
 藤沢市の地域センターとして書類の発行や福祉の手続きを行い、市民の交流サポートなど様々な活動の拠点となっており、市民図書室も運営されています。さらに「鵠沼郷土資料展示室」という独自の施設があることが注目されます。
 
 そこで現在開催中の素晴らしいイベントについてご紹介します。
 『長谷川路可 鵠沼ゆかりの世界的芸術家』という企画の展示会です。

 6月23日~12月15日のロングランで、10~16時(月曜日と年末年始は休館)に見学できます。学園生と保護者の方々や教職員など学園関係者の皆様、そして広く一般市民の方々に、ぜひ見学していただきたいと願ってご紹介いたします。
 
 まずご紹介するのは、展示会の設営のリーダーであり、来場者へのご案内もして下さる、内藤喜嗣先生です。湘南学園の大先輩でありご卒業生でおられます。

 内藤先生は、鵠沼地域の歴史及び湘南学園の歩みについて誰よりも精通されています。ご学識の深さに圧倒されます。学園も含めて地域に関係する膨大な資料の発掘・収集・保存・閲覧提供・企画展示を通して、住民や市民の方々が参照・活用できるようにとご尽力され、広範な関係者に絶大な貢献を重ねてこられた方です。
 近年も、湘南学園教職員や地域住民を対象とする連続講演会でレクチャーしていただき、学園創立85周年記念誌にもご寄稿いただきました。藤沢市生涯学習大学の講師も担当され、全国紙の紙面やFMラジオ放送等にもたびたび登場されていました。いつも緻密で入念なお仕事ぶり、誰もが理解しやすい展示や講演を追求される内藤先生のお姿に心から敬服するばかりです。
 
 長谷川路可(1897~1967)は、大正~昭和の時代に日本と世界で活躍した偉大な画家の方です。日本画やフレスコ画の巨匠であり、キリスト教黎明期の信者を題材とした制作した宗教画や、広範な公共施設に制作した壮大なモザイク壁画など多数の名作を残されています。

 1964年東京五輪の際に旧国立競技場に記念制作された巨大な壁画が、このたび新国立競技場の設計を担った建築家・隈研吾氏のご意向で、その青山門の入り口に復興設置されたことから、長谷川画伯の存在が再び大きな脚光を浴びました。この経緯についても今回の展示会で詳しくビジュアルに紹介されています。
 そして長谷川画伯が戦時中に制作した大作「旭日富嶽図」が、ついに今回の展示会でお披露目されています。この作品をめぐっては苦難の歩みがあり、内藤先生自らその修復を主導され、昨年夏から専門家の協力を得て作業が開始され8か月かけて復元が実現されたのです。私も間近でこの大作を鑑賞して深い感銘を受けました。
 
 長谷川路可は、1927年から約10年間この鵠沼に居住し、鵠沼海岸のアトリエを拠点に、日本最初のフレスコ壁画や独自の日本画を多数制作しました。また服飾史の専門家でもあり、生涯にわたって多数の学校で講義や授業を行いました。

 展示会で、湘南学園に因む重要な写真にも出会いました。建学の翌年、草創期を支えて下さった学園関係者の方々や可愛い子ども達とご一緒に撮影された貴重な写真でした。小さな学園生たちも路可先生のレッスンを受けていたのです!鵠沼時代の長谷川画伯をめぐる様々な人間関係のつながりについて内藤先生から詳しくレクチャーしていただき、画伯と湘南学園の深い縁を知ることができました。
 
 長谷川路可は、生涯で何と4人のローマ教皇に拝謁した人物です。普通の信者としてきわめて稀な体験であり、カトリック画家として重要な宗教画制作の依頼を受け続けた証でもあります。日本国内やイタリアなど各地の教会や聖堂で壮大な祭壇画や天井画の制作を次々と担われ、精魂込めて完成した壁画や日本画を教皇にも献上しました。そしてイタリアの地で亡くなる直前まで生涯現役で制作に没頭されました。

 展示会では数々の宗教画が判りやすい解説とともに設置されています。歴史的なキリシタン受難を示す作品などが多く、深くて精緻な表現に惹かれました。渡欧した留学時代を含めて生涯に築いた交友関係の幅広さもスケールがとても大きく、長谷川路可のお人柄を示す写真とともに心に残りました。
 
 内藤先生のご説明を受けてじっくり鑑賞させていただき、気がついたら1時間以上になって閉館時刻を越え、スタッフの方に申し訳なかったです。来て良かった!皆様にも来て頂きたい!の一念をもって帰路につきました。

 今回もまさしく「百聞は一見に如かず」でした。鵠沼海岸駅から海側に徒歩約3分です。学園に来られた時などご都合をつけられ、ぜひ展示会へお越しください。