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第202回 米国の新政権発足に寄せて

2021年1月27日

 今回の通信は、歴史的な岐路に立つアメリカについて述べたいと思います。

 昨秋の大統領選挙とその後の混乱をめぐる連日の報道には、世界の人びとが重大な関心を寄せ続けてきました。ジョージア州の上院決選投票も新大統領を支えましたが、ついに連邦議会議事堂の襲撃事件が起こされました。アメリカの社会は深い分断に引き裂かれ、強い敵意や憎しみが横たわっています。更にコロナ禍の下で米国内の犠牲者は40万人を越えているのです。
 
 バイデン大統領の就任式は、多数の兵士が警備にあたる異様な厳戒態勢のもとで挙行されました。前大統領は不在でしたが歴代の大統領夫妻も参集し、米国史の重要な節目となる式典は何とか無事に実施され、ようやく新政権が発足したのです。

 レディー・ガガの国歌独唱には心が震えました。沈鬱な現状を打破して希望ある未来を築こうとの魂の叫びでした。「この国に住む全ての人びとの心に向けて歌います。敬意と思いやりを持って」とのコメントも胸を打ちました。
 バイデン新大統領は、就任演説で全国民の結束を呼びかけました。「意見の不一致が分裂を導いてはならない」「全ての米国人のための大統領になること、私を支持しなかった人達のためにも一生懸命戦うことを誓う」と述べました。20分を越えるスピーチは聴衆と全米の国民に向き合い、米国と民主主義の再生へ向けた強い決意で一貫し、長い歴史と世界の実情を踏まえて政治理念を力説する姿に感銘を受けました。
 
 湘南学園では2015~2018年度の夏、「米国トップランキング大学視察旅行」に先生方が数名ずつ参加しました。湘南学園の同窓会と後援会のご支援による「教育振興基金」を利用させていただき、世界最高水準の教育のあり方を視察し、英語活用力の重要性を認識し、海外大学への進学支援の情報収集も行うことが目的でした。
 サンフランシスコとボストンを拠点にわずか1週間でしたが東西の名門大学や中高一貫校を駆け足で見学しました。各地では日本人の留学生や留学見学者との懇談会も組まれていました。

 私がまず想い出すのは各大学のキャンパスツアーです。広大で緑あふれる学内をこちらに身体を向けて歩きながら熱心に親密に母校の教育を説明してくれる現役生の皆さんが魅力的でした。民族的には欧州系、アジア系、アフリカ系など実に多様でした。
 中国を筆頭にアジア系の留学生が相当に多いこと、黒人やヒスパニックなど大学生の民族構成が多様なことは想像以上でした。総じて学生達は専攻分野やリベラルアーツの諸分野を猛勉強するのが当たり前の日々を過ごし、自分が成長できる手応えや世界各地から集まった仲間との支え合いを大事に、人生の可能性を信じて黙々と努力をしていました。

 富裕層と貧困層の途方もない格差も垣間見る一方、文教地区では音楽やダンスを路上で披露する人びとの開放的な光景にも接しました。民族も宗教も文化も階層も異なる約3億人もの人びとを統合するアメリカ社会の運営の難しさを痛感させられました。
 
 湘南学園中高では、北米のカナダと米国への海外セミナーで実績があり、ロータリークラブの交換留学制度により渡米したり、米国の大学へ留学や進学をした学園生や卒業生の諸君がいます。現在は遠く離れたオンライン参加だけでも志を絶やさず、来たる現地渡航に備えて精進する人達もいます。

 アメリカの社会が現在の複合的な苦難をどう乗り越えていくのか。そして人類的な危機の深まる世界の中で新たな米国の使命をどう自覚して取り組んでいくのか、ひきつづき注視していきたいと思います。そして渡米の機会に恵まれた人達には、米国社会の多様性に満ちたエネルギーに目を向け、より良い社会を目指して率直に語り合い行動する若者達のパワーを知り、自分事として学んでほしいと思います。